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【悲報】うちに魔王が家出してきたんですが【俺勇者】
「お前は優しいな」
心の底から、感謝でいっぱい。超幸せ。そんな低い声が響き渡る。
「こんな、コタツなんてものを用意してくれて。毎日あったかい布団で寝かせてもらえる。こんな幸福、今まで味わったことなんかなかったぞ……」
「いや、コタツはお前のために用意したんじゃないし、布団は俺が使ってたのをお前が強奪しただけだけどな?」
「ぬくぬく……」
「話聞けよオイ」
うちに魔王がいます。
ええ、うちに魔王様がいらっしゃいます。
大事なことなのでもう一回言いましょう、うちに魔王様が住みつきました。
あの、俺勇者なんですけど。ここ、俺が魔王退治のために城下町に契約した、いわゆる賃貸アパートなんですけど。
「あのな……」
魔王様、死んだ目で“家出してきたから住まわせて”とか言い出して、そのまま俺の家に住みついてらっしゃいます。
この世界は、長年魔族率いる魔王が世界を支配しようとし、そのたびに人間の勇者が現れて抗おうという構図になってるわけなんですが――魔王城から家出してきて勇者の家に居候する魔王なんて前代未聞なんですけども。
「お前、魔王としてのプライドないの?」
俺は呆れ果ててストレートに尋ねた。
「仮にもお前魔王じゃん?俺勇者じゃん?敵同士なわけよ、戦わないとまずくね?世界の支配が魔族の悲願なんだろ、なんで魔王様堂々とサボってんだよ」
「悲願なんかもう知るか。大体世界なんか支配しても楽しいこと一つもないじゃないか。魔族が世界支配なんかしてみろ、部下をコキ使い上司にえっちな真似するパワハラ&セクハラ野郎どもしか残らないんだぞ絶対経済回らんだろが」
「え、お前セクハラされてたの?」
「掘られる寸前で逃げた私超偉いと思わない?」
「エ、エライネ……」
「アリガト……」
ちなみに、魔王様は長髪巨漢ムキムキの美丈夫である。掘られる、なんて言い方からして部下は男だったのだろう。気の毒がすぎる。
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