序章

1/1
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

序章

                 光る海と空、溢れんばかりの生命のきらめきが、私を包んでいた。  私は母に抱かれ、幸福にまどろんでいた。愛情と、陽射しと、何億もの生命を育んできたこの星の鼓動が、私をゆりかごのように揺すっていた。  だが、すべてを奪う忌まわしい響きは、足元から突然、やってきた。  ぎしぎしという不吉な音が聞こえたかと思うと、急に空と海とが反転した。  母の血を吐くような叫び、私はきつく抱きしめられ、恐怖に目を閉じた。    ――ママ、パパ!  大きく強い父、暖かく優しい母。小さな身体から迸る叫びに、応える声はなかった。  次の瞬間、世界が壊れるような衝撃と共に、私は冷たい闇の中へと投げ出された。  あの日、運命の凶暴な爪によって、幸福な日々は永遠に引き裂かれてしまったのだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!