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序章
光る海と空、溢れんばかりの生命のきらめきが、私を包んでいた。
私は母に抱かれ、幸福にまどろんでいた。愛情と、陽射しと、何億もの生命を育んできたこの星の鼓動が、私をゆりかごのように揺すっていた。
だが、すべてを奪う忌まわしい響きは、足元から突然、やってきた。
ぎしぎしという不吉な音が聞こえたかと思うと、急に空と海とが反転した。
母の血を吐くような叫び、私はきつく抱きしめられ、恐怖に目を閉じた。
――ママ、パパ!
大きく強い父、暖かく優しい母。小さな身体から迸る叫びに、応える声はなかった。
次の瞬間、世界が壊れるような衝撃と共に、私は冷たい闇の中へと投げ出された。
あの日、運命の凶暴な爪によって、幸福な日々は永遠に引き裂かれてしまったのだ。
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