1stプロポーズ

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父が生前、会社のトップから外されたのも、以前は祖父母達も一緒に住んでいた一等地に立つ土地建物を手放すことになりそうな事態に陥ったのも、全部叔父が仕組んだことだと聞かされた時は、嘘だと思った。 だって淳也叔父さんはお母さんの妹、明希子おばさんの旦那さんでお父さんと同じお婿さん。大きなグループ企業の創業家出身だけど、叔母さんと結婚して以来父のホテル経営を支えてくれていた。 叔母は私が生まれる前、お腹にいた赤ちゃんと一緒に死んでしまった。若くして奥さんと死別した叔父さんは実家に戻らず、楠瀬を名乗ったまま私達を可愛がってくれた。 だから私達は最初信じられなかった… 「何、ぼうっとしてます?暑さにやられましたか?」 急に間近で声がしてビックリした。 ああ、もうこんな時間か… 「いらっしゃいませ。今日は何になさいますか?」 私が売り子に戻っても、目の前に立つ長身の青年の毒舌は続く。 「何にするも何も日替わりしか残ってないじゃないか…全く君はいつにも増してとぼけてるね」 仕方ないじゃない! 父が亡くなったこの時期は、自然と昔を思い出したり考え込む事が多くなる。 毎回同じ時間に来店するこの男性は、美園聖夜さん。私の婚約者だと言って憚らない、ストーカーもといこの店の常連客だ。 「日替わり美味しいですよ。肉じゃがに山椒の実が隠し味で入っていて」 私が推すと彼は味を想像するように思案し、偉そうな態度で 「ふむ。じゃ貰おうかな」 「有り難うございます!」
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