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ルームミラー越しにこちらへしゃべりかけ、
「おっと、ごめん。九条、九条」
と、慌てて舌をペロッと出して言い直した先生。すると、九条先輩が呆れたように口を挟む。
「マネージャーは知ってるよ、千早と俺のこと」
「え? マジ? そっか、彼女だもんね」
部活のときとはまったく違うふたりの空気に、私はソワソワした。そして、〝彼女〟と呼ばれることにも慣れず、どんな顔をしたらいいのか困る。
「ていうか、お互い〝マネージャー〟と〝先輩〟呼びなの? 下の名前で呼ぶのはふたりのときだけ?」
「千早、そういう質問、オヤジ臭い」
「だって、なんかよそよそしいからさぁ。あ、ていうか、敦也。この前も言ったけど、荘原さんは三年で受験生なんだから、ちゃんと本業優先させるように。部活中も節度のある交際を……」
「わかってるから。あいかわらず先生みたいだな、ホント」
「先生だし」
仲のよさがうかがえる会話のテンポに、私はただただ愛想笑いと相槌を打つのみ。先輩が高三のときも、裏ではこんなふうにフランクに話していたのだろう。あの頃は全然知らなかったけれど。
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