事の発端は。

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後ろに束ねていた髪のゴムを(ほど)かれ 縛りを開放された毛先がパサっと肩に降りる。 「こ、困りますッ」 慌てて顔を背けてみたけど 眼鏡を外されて見えない上に 髪まで自由にされてしまっては どうする事も出来ない。 仕事中だというのに この人は何をしてくれているの。 「だから大人しくして。  それと顔はこっち。」 淡々と冷静に喋りつつも正面に向けられ 顔に掛かる両サイドの髪を耳の後ろに掛けられ ポケットから黒いヘアピンのような物を取り出し 私の前髪を流して分けるように留め始める。 これはいったい何の罰ゲームだろうか。 いや、羞恥プレイ? どちらにしろ 会社で、しかも大勢の前で屈辱を味わっているのは確か。 それに加え… 「…なるほど。  素材は良いんだ」 なんて真剣な表情で妙な納得までしてくれて 更に恥ずかしさが倍増する。 「…ッ」 大声を出して拒絶しようにも 悔しい事に相手と場が悪く そういうワケにもいかないから唇を噛みしめて 堪えるしかない。 本当に最悪。
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