「騒がしき日常」

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「騒がしき日常」

木曜日の朝は冷たく冷えた烏龍茶から始まる。 ……いつも飲んでるけど。 っていうか11時だから朝でもないし。 俺は小早川 涼(旧名は犬神)。20歳。 一人暮らしでバイト暮らしをしている。部屋はマンション4階建て2階の1K。やや狭いが東京付近なので交通に不便が無く、近くに木や川が流れて静かだ。 大学どころか高校自体入学していない。 かといって就職していないのは趣味の時間確保の為。趣味は映画と心霊スポット巡り。 ………何故このような脳内独り言をかましているのかというと昨日観た映画の影響である。立て続けで観た映画3本とも脳内語りのオンパレードだったからだ。 B級にしてはなかなか面白かった。特に「ブロークン・ハート」が別格といって言いほど最高だった。あれは続編が出そうだし、ぜひチェックしなければ。 ……鍵を差す音がするな。 ガチャ。 開いたってことは… 足音が近付き、今いる部屋の扉が開く。 ?「おにぃちゃん⁇可愛い妹が来ましたよ〜」 黒髪ショートでモデル以上の顔つきとスタイルが俺の妹、森川 千夏(旧名はもちろん犬神)。18歳。大学1年生。 この暑い季節に合った白のTシャツと黒のロングスカートを履いている。そして、屈託の無い無邪気な可愛い笑顔。心が浄化されそうだ。癒し、圧倒的癒し。可愛い。 千夏「お兄ちゃん……な、何故独り言⁇//すごく嬉しいけど、恥ずかしいよ…///」 照れながら髪の先をいじっている。 涼「あぁ…声に出てたか……つい本音が…。」 より一層顔が赤くなる。 純情だなぁ。 病院入れられる前はあんな小さかったのに6年ぶりに会った時は美少女過ぎて本当に驚いた。病院には女性がいなかったので、女耐性が無さすぎという理由もあるが、実の妹に発情しかけたぐらいだしな。 そのことに危機感覚えた俺は自分を追い込みまくって、流石に妹に発情しないけどね。我ながら頑張ったなぁ。 自分を意識失うまで殴り続けた日々を思い出す。 千夏「お兄ちゃん。いきなり黙り込まないでよ〜。」 千夏が背中から抱き着いてくる。 柔らかい感触と良い匂いがする。止めておくれ。息子は大丈夫だが、兄ちゃんの心臓バクバクし過ぎて破裂しちゃう。 涼「…千夏。我が妹よ。何か用があったのでは⁇」 くっつくのを止めて欲しいのとそのままでも構わないという気持ちがせめぎ合う中、辛うじて疑問の言葉を吐き出す。 千夏「お兄ちゃんにお願いがあって来ました!」ニコッ 後光が差して見える… 背中越しでもすげぇ笑顔なのが分かるぞ。 背中から回していた腕が解けたので、千夏に体を向ける。 千夏「今日の夜、大学のサークルの飲み会に行くことになったから一緒に来て欲しいの!」 聞けば千夏の友達に誘われたらしい。元々サークルに何処も入っていない千夏は断るつもりだったが、友達の強い説得に負け、仕方なく行くことになったらしい。 仮病でも使って当日キャンセルすればいいのに、千夏は責任感が強い為、行くと言った以上行くつもりらしい。 涼「……なるほどなぁ。だが、俺は大学生じゃないぞ?参加出来なくないか⁇」 それどころか高校行ってないし、中学も半年しか通えてないし。 一応病院内で必要最低限勉強してはいるが…って今は関係無いが……。 千夏「どんなサークルか分からないから、最悪の場合酔わされて襲われるかもしれないよ?だから来て欲しいの。」 涼「分かった、行く。」 即答する。 そういうことなら行く。絶対に行く。 シスコンと言われようと構わない。シスコンで何が悪い⁇というかシスコンじゃなくても妹の為に行くだろ⁇普通? 千夏「ありがとう!お兄ちゃん!!」 内容を話していた時からの不安そうな顔から輝いた笑顔に変わる。 千夏「それに飲み会の後、大学で解体予定の旧校舎で肝試しするみたい。結構出るって話らしいからお兄ちゃんが来てくれると安心できるよぉ。」 千夏は怖いの苦手だからなぁ。 怖いもの見たさで一緒にホラー映画観るけど、いつも後悔してるしな。 しかし、肝試しか…いいね。 あの場所は気にはなっていたし、念のため準備しておくか。 涼「飲み会は夜だろ?いつ頃行けばいい⁇」 千夏「授業後だから18時過ぎに終わって19時に飲み会開始だね。18時30分に大学に集合しようよ!」 ちと遠いが取りに行かなきゃならないからなぁ。 涼「用事があるからちと遅れるかもな。もしそうなったら場所教えてくれ。」 千夏「えっ?お兄ちゃんに用事⁇……まさか女!!??」 訝しげに睨む。 ブラコンだな……俺も人の事言えないか。 俺が中1まで妹にベタベタすると嫌われるという話を聞いて一定の距離保っていたからな。 その後、会わない期間が長かったから余計にブラコン度高めだ。 …ちょっとその目止めてくれません⁇ 光が見えませんよ⁇ヤンデレみたいになってる… お兄ちゃん目覚めちゃうから!妹ヤンデレ好きになっちゃうから!! 涼「違うから!1人で買い物してから行くだけだから!」 千夏の目に光が戻る。 ふぅ…良かった…… 千夏「それなら良かったよ〜。私も買い物付き添いたいけど、授業があるし…遅れそうなら連絡頂戴ね?」 涼「あいよー。」 頬に流れた冷や汗を拭く。 千夏「じゃあ、そろそろ授業に間に合わなくなるから行くね?」 名残惜しそうにしている。 涼「後でなー。」 玄関外まで送る。 行ってきますー!と笑顔でいつまでも手を振る妹を見て笑みがこぼれる。 さーてと。 準備してから行くか。秩父地味に遠いんだよなぁ。しかもあそこ駅から離れているし。 まぁ、妹の為に一応保険は取っとかないとな。 急ぎご飯を食べ、身支度を済まし、キーホルダーの付いたリュックサックを持って、外へと飛び出す。
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