ーー

1/22
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

ーー

雨の音が聞こえる嫌な朝。 私は自分の心臓の辺りに見慣れない蕾を見た。 「なんじゃこれ!」 震える手をゆっくりと蕾に近づける。けれど蕾に触れることは叶わず、ふにっとした自分の胸に手が届いただけだった。 「え、え? ほんとになんじゃこれ?」 私はまだ寝ぼけてんのか? それかこれは夢だ。 そう思って頬を引っ張ってみる。 「痛いな……」 ベッドから起き上がってカーテンを開ける。ザーッとドシャ降りの雨の匂いがした。窓を開けるとその匂いが強くなる。梅雨時だから仕方がない。 「うん、嫌な朝だ」 もう一度自分の身体を見下ろす。やっぱり心臓の位置には蕾があった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!