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矢萩は上田デスクの横で、報告書を書いていた。上田は
大手自動車メーカーにいた人で、親切な人柄である。
上田は会社が不景気になり、クビになって興信所で調査員
として働いている。
頭が良い人で、工場長までやった。なので仕事もすぐに
覚えてしまった。 もうひらの社員の上のデスクになって
いた。
デスクは新人の面倒を見てやり、一人前の調査員に育てる
のが仕事である。上田は親切に指導しており、評判が良かった。
その上田デスクに見なれない若い男が近寄って来た。手に
報告書を持っている。新人の調査員だろう。ごつい顔をして
いた。
その男は上田に報告書を渡すと自分の席に戻って行った。
男の名前は中村という。のちに矢萩の親友になった。
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