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久しぶりの外の空気はピリッとして気持ちがいい。けれど蓮はその『ピリッ』に負けないくらい『ピリピリッ』としていた。
「ガラス越しに見るより青空がきれいでしょう?」
「…………」
「外に出られるようになって良かったね!」
「…………」
さすがにこれくらい無視されればジェイにだってわざとだと分かる。
「さっきの、怒ってるの?」
「…………」
「ごめんなさい。つい笑っちゃったんだ、あんまり違う姿だから」
蓮の前に回ろうとすると反対側を向かれた。蓮にしても、自分の姿成りをこれほど人に笑われたのは初めてだ。それもよりによってジェイに。だから半端なく傷ついている。
「蓮、どうしたら許してくれるの?」
涙が落ちそうになる。
「本当にごめんなさい。俺、蓮と散歩したくて店から駅まで走ったよ。電車の中も階段に近いドアまで走ったんだ。こっちの駅に着いてからは走っちゃダメだって言われたから走ってないけど、病院の敷地内は走った。それはいいよね? 最初の散歩について行きたかったんだ、どうしても」
やっと蓮の気持ちは解れてきた。
「すまん…… 俺も悪かった。恥ずかしかったんだよ、この格好が。それで笑われたからカチンと来た」
「うん。そうだよね。蓮はいつもカッコいいのに今は」
「今はなんだ」
「あの…… 可愛い。ほんとにクマさんみたい」
「ジェイ!」
「もう言わない! 写真も撮らない!」
「撮ったら絶交だ!」
「えええ?」
「あ、違う、夫婦喧嘩だ」
しばらく2人で地面を見ていたがその内どちらからともなく笑い出した。
「バカみたいだな」
「蓮、絶交って」
「言うな! つい口に出たんだ。言い直しただろう」
「でも絶交って言った」
「言わない」
「言ったよ、はっきり!」
そしてまた2人で吹き出す。
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