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「園田が和室に、城戸君とシドを放り込んだ。だって――!」
御園大佐がそこで『あははは』と大笑いをした。
「園田、びっくりしていただろ。だって、……ほら、なあ!」
職場なのであからさまに言えないようで、『園田を気にしているシドが、まさか夫になる大佐と、酔って転がり込んでくるとは思わなかっただろう』と本当は言い並べたいところを我慢している様子。
「はあ。だからなのか、今朝のフランク大尉はいつものやんちゃな彼ではなかったんですよね。礼儀正しく我が家から出掛けていきました」
「へえ! いちおう大人の対応ができたんだ。あのシドが。へえ、見てみたかったなあ」
このおじ様にそこまで言わせるシドは、どんなガキだったんだと雅臣は眉をひそめる。
「大佐にもお手数おかけしてしまいました」
「そんなこと言いに来たのか。別に良かったのに。そこらへんの隊員はみーんなそんなもんだよ」
もちろん、この礼は伝えて然るべきと思ってここにきた。だが本当の目的は……。
「本日は、御園大佐から許可をいただきたいことがあって参りました。よろしいですか」
雅臣の確固たる表情を読みとったのか、眼鏡の大佐の顔つきもかわった。
「それも、わざわざ? どんなことかな」
雅臣はきっぱりと告げる。
「コードミセスのデータを使わせてください」
御園大佐の眼つきが変わった。
「どうして。いまここで、コードミセス? そのデータと対戦したいと希望するパイロットは多いが、城戸君もその衝動があってのことなのか」
コードミセス。その名の通り、御園准将の飛行データをパターン化したデータのこと。
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