ポピーの花が開く

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「沙奈……」  振り返ると大泣きをしている尚君がいた。こんなに取り乱した尚君、見たことない。なんで? 心配してくれたってこと? 必死に探してくれてたってこと?   どうしよう、涙が込み上げてくる。  嬉しい、見つけてくれた。心配してくれたんだね。たくさんたくさん、私のこと考えてくれたんだね。ありがとう尚君―― 「あはは、尚君ったらそんなに泣いちゃって、ごめんね、驚かせて」  私は膝をついた尚君の背を撫でる。大きな子供みたいだ。やばい、めっちゃ嬉しい。  尚君は、私が腹を立てて出て行ったのかと思ったみたい。何度も「ごめん」と謝ってくれた。違うよ尚君、謝るのは私の方。 「私がね、このままで大丈夫なのかなって、不安になっちゃったんだよ。ごめんね、尚君」  そういうと尚君はキョトンとしてしまった。尚君、大好きだよ。  私は尚君に椅子を出した。良かった、二つ持ってきて。 「なんか面倒くさいことしちゃってごめん。なんか私がいない間も私のこと考えて欲しくて」 「めっちゃ考えた」 「来てくれてめっちゃ嬉しかった。私も尚君の有難みを再認識しようと思ってソロキャンしていたのです。一人ご飯、全然美味しくなかった。朝起きて横に尚君がいないのも寂しかったし」  尚君のことがどれほど好きか、私は思い知った。 「俺も思い知った」 「ん?」 「沙奈の有難み」  嬉しい。尚君も同じように思ってくれるのなら、めちゃくちゃ嬉しい。  二人でインスタントコーヒーを飲んでから、二人でテントをたたんだ。  一人では味気ない全てが、二人だと素敵な思い出になる。それを思い出した。  受付に「ありがとうございました」って元気に挨拶をすると、おじさんが顔を出す。 「お、やっと迎えが来たのかい?」 「はい!」  バレてた。私が迎えを待っていること――なんか恥ずかしい。  ポピーの花が風に揺れていた。まるで尚君が来るのを待っていたみたい。  可愛らしく綻ぶ花に微笑んで、私は尚君の手を取った。もう悩まない、私は尚君とずっと一緒にいたい。
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