「 1章・10 」追い出される

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「 1章・10 」追い出される

屋敷の中を覗きしてたら分かるわよ、それくらい。と思ったけど、病気の事を知ってたので信じたくなった。 「病気を持ってますね、物が見辛い。聖女魔法で抑え込んだ跡がある。」 それは、家族しか知らない事だった。幼い娘が次第に目が見えなくなって起き上がれないというので、母親が知り合いを頼って遠くまで治療に行ったらしい。 「先天性の病という診断だったの。治療方法は無い珍しい病気だから、治療魔法で止めたって聞いたわ。」 「その効果は、18歳で無くなりますよ。」 「ええっ、嘘ーー!」 悪魔は、ニタッと笑う。そして、言った。 「私なら、治す方法を知っています。任せませんか?」 悪魔との取引き。それは、魂の契約とか。魂を売る事になるのかしら。 屋敷の門が叩かれた。兵士が早馬で文書を届けに来たのだ。それは、ジュリアンの後見人でからの物だった。 『公爵の姉の夫からの訴状が王家に提出されたので、ジュリアンの婚約無効が決定した。ただちに、婚約破棄されたし。』 理由は、平民は公爵家の跡取りと婚姻するには相応しくないだった。そして、スザンヌは婚約者では無くなる。 婚約破棄されてしまったのだ・・・ 荷物1つを持って、スザンヌは屋敷を出た。贈られたドレスや宝石を持って行っていいと言われても、自分の物では無い。母親から持たされた物だけを持ち出す。 「お嬢様、お気をつけてお帰りください。」 執事の挨拶に、笑顔で手を振る。執事の後ろからメイド達が涙ぐみながら手を振っていた。ここへ来た時に入ったのは、裏口だったのだ。また、裏口から出て行く。 (結局、認められてないよねー。) 貧乏で名ばかりの貴族だから、王家から認められなかった。早く家に帰りたかったけど、こんな風に追い返されると虚しい。 トボトボと歩き出すスザンヌに話しかける声。 「何で、馬車を断ったんですか。楽なのに。」 隣を悪魔が歩いている。見送る人達に見られてないかと気になった。 「私は、あなたにしか見えてませんよ。契約者ですから。」 そうだった、契約したんだ。迷ったけど。 「ああ、魂を売り渡しちゃったんだ。私!」 「それ、時代錯誤(じだいさくご)です。私は、天使のお手伝いをしている親切第1の悪魔ですから。」 それ、同じだと思うけど違うのかしら。 「さ、参りますよ。」 そう言うなり、スザンヌの腕を掴む。参りま刷って、何処へ。宙にドアが出現した。そのドアへ吸い込まれるように2人は入って行く。 美しい娘が、ドアの前で出て来るスザンヌとアグアニエベを待っている。 「いらっしゃい、テムプルム神殿へ。アグアニエベ、何の用なの?」 スザンヌは、ジーッと彼女を見た。駄目だわ、目が霞んできた。目の前の人に吸い寄せられるように見える景色が流れて行く。 2人が慌ててスザンヌを支えた。おかげで倒れずに済んだ。アグアニエベが、頼む。 「アンジェリカ様、治してくれませんか。この子の病気。」 治す?この人は、もしかして聖女? 「治すのは、簡単だけど。この子には、自分を守る事が出来ないわよ。魔法の勉強をさせないと、狙われるんじゃない。」 狙われるって、どうして?私は、平凡な魔力なしの貧乏男爵令嬢なのに。 「珍しいスキルだわ、反魔界の力を感じるの。魔界から煙たがられて処分されそうだから、私から贈り物をあげるわ。あなたが始末した魔物の魔力を吸い取るのよ。」 そうすれば、悪い魔物をやっつける度に魔力が増すってわけ。魔力が増えれば自分で守れるもの。 大聖女さま、感謝しまーす! でも、簡単だと思ったけど甘かった。
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