誠実な愛ならば家にある

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やたらと白っぽい家電のパンフレットの束をテーブルに広げてサユがまた同じことを言っている。 「やっぱりわたし的にはシャープかなって思うんだよね、中を自動で洗ってくれるんだって。でもデザインはどう見てもパナソニックがいいんだよねー、変な丸みがなくて。これなんか機能もいいんだよ、匂いを消してくれるんだって。ねー、いっくんどう思う?」  十年使い続けた洗濯機がとうとうお陀仏になってしまった翌日から、妻のサユは嬉々としてリサーチを始めた。もうかれこれ三週間、雨の日も深夜もコインランドリーに通っているのに、不便さよりも新しい洗濯機を調べ尽くし納得して購入することの方が大切らしい。紙面に並ぶ一ツ目みたいな窓付きのずんぐりした立方体は正直言って俺にはどれも同じに見える。今時の家電はどれでも相当キレイになるんだろうし、洗濯のたびに深夜でもサユが出歩くのが毎回少し心配になってしまう。早く決めて買えばいいのに。 「んー、洗濯はサユ担当やから任せるって。」 「もう!それじゃいつまで経っても買えないでしょ。明日土曜だしランチしてからヨドバシ行こ?いい?」 「わかった。じゃあ選択肢3つぐらいに絞っといてよ。行ってくる」  三月も下旬というのに雨の朝はまだ冷える。晴れている日は自転車で通勤しているから気が重い。俺が通勤に使う系統のバスは三分に一本やってくるのに、雨よけからはみ出すほどの人がバスを待って既に歩道に溜まっていた。会社まで歩けば15分だけど、靴やパンツの裾が朝から湿ってしまうのは極力避けたい。  スマートフォンでツイッターを開く。今日は15件通知が届いている。少ない方だ。大体は俺のつぶやきへのリプライ、「裏アカ」と呼ばれる女性たちからのDM、あとはその手の女性を装ったエロ関連の業者。俺はいわゆる「裏アカ」界の住人だ。裏アカウント、つまり表立ってのリアルな人間関係では到底言えないようなことを、仮面を被ってつぶやくアカウントのことだ。身内の悪口程度のものから、赤裸々な性体験、アブノーマルな性癖、不倫、下着姿の自撮りを晒す女性。セックスレスを嘆く既婚者のアカウントは男女問わず多い。レスられ(パートナーに性交渉を断られ続けている状態)、婚外(結婚しているが家庭の外で恋愛および性行為をする関係)など、この界隈で覚えた単語がいくつかある。俺はぼちぼちフォロワーが2,000人に届きそうなところ。とは言えこんなこと、サユはもちろん親類にも職場の人間にも昔からの友人にも絶対に知られてはいけない。結婚してから出会った女性たちとの出会いは、ほとんどがここでだった。俺の裏アカウント名はナリユキと言う。本名は一成。かずなり、だけどサユは俺をいっくんと呼んでいる。  今日もあずきさんからDMが届いている。来週の月曜に行くお店についてあれこれと書いてくれている。あずきさんはN市に住んでいる四十代の女性で、まだリアルでは会っていない。いわゆるレスられ妻で、もう六年も夫との性交渉がないらしい。裏アカは数ヶ月前に始めたようで、頻繁にいいねや的を射たリプライをくれるので俺もあずきさんのところを覗くようになった。タイムラインには毎晩美味しそうな料理の写真がいくつも並ぶ。自分の店を持ちたい、なんてこの界隈では珍しく将来の夢を語っているのが印象的だった。ある時テーブルの料理を撮った写真の窓ガラスにあずきさんと思われる女性の顔が写り込んでいたので、身元がバレるのではと俺がDMをしてから、直接のやりとりが始まった。あずきさんはすぐに写真を削除した。フォロワーが六〇人程度だから身元はきっとバレないだろうけどデブだから恥ずかしいの、と言っていた。けれど、ふんわりした髪と下がり気味の目尻に、そして抱き心地の良さそうな体の丸みに、俺は飛び込みたくなるような包容力を感じた。  職場に着くとまずメールチェックをする。今朝は3件でホッとする。来週月曜の洋菓子店との打ち合わせについての時間変更の確認と、別クライアントからの写真の差し替え依頼、あとは印刷会社のワークショップについて。俺はO市内にあるデザイン会社に勤めている。クライアントは飲食店が多い。某コーヒーチェーンのポスターや、贈答用のお菓子のパンフレット、全国展開しているうどん店を担当した際にはCMで起用した女優にお目にかかったこともあった。華やかだし、好きな仕事ではある。勤務時間も世間で思われているほどブラックではない。フレックスだし、外での打ち合わせや撮影の立会いで外に出ることもよくあるし、土日も休みだ。
 メールの返信が済んだので喫煙所で一服していると先輩社員がやってきた。目が赤い。どうしたんスか、と尋ねると、春分の日で祝日だった昨日は子供の卒園式だったという。そんな泣くもんスか?と驚いて見せると、そりゃあそうや、0歳の頃からずっと一緒に育ってきた子供たちが、あんなに大きくなっ……、そう言いながらまた目を潤ませていたので俺は思わず笑ってしまった。俺には父親の気持ちが想像できない。結婚して五年、俺とサユにはまだ、子どもがいない。欲しくないわけじゃない。いつかは。俺はなんとなく親になる踏ん切りがつかず、学生時代から五年付き合って結婚、今年で十年一緒にいるサユに対してもだんだんと身内のような気持ちしか持てなくなってしまっていた。結婚二年目あたりから完全にセックスは無くなった。サユから特に何か責められる訳でもないし、親や周囲の人もお節介なことは特に何も言ってこない。とはいえ同年代の同僚に子どもが生まれたり、友人の子どもの写真がSNSに現れた時には、誰に対してなのか判然としない気まずさと申し訳なさ、そして焦りを感じる。いつか、はいつ来るんだろう?缶コーヒーを飲み干し、煙草を根元まできっちり一本吸い終わったので自席に戻る。
 そんなことより週明けの月曜にはあずきさんに会える。京都での打ち合わせが夕方に終わるのでその後直帰することになった。心の中でイェーイ、とつぶやく。俺の会社があるO市と京都市の間にあずきさんの住むN市がある。お互いの地元で会わないのは、俺が勝手に決めている婚外デートの鉄則。俺の住むO市はかなりの都会だけど、知ってる人に見られてしまう確率もそれだけ高い。なので足を伸ばして京都や神戸に出向くことが多い。半個室の雰囲気のいい店にも、その近辺のラブホテル事情にもやたら詳しくなってしまった。
 あずきさんには小学生の子供がいるらしい。詳しいことはSNSにもDMにも書かれていないのでわからないけれど、どうも月曜日が自由に動ける日であるらしく、DMもツイートも頻繁に来る。本来なら誘った俺がすべき店のチョイスを任せたのは、彼女の作る料理が盛り付けなどもプロ級のもので、かなり舌が肥えていそうだから。俺は結婚して以来台所には皿洗い以外では滅多に立たないが、食べ物の写真なら職業柄毎日見ている。  ”では月曜の7時、お店は和田の名前で予約しています。本名じゃありませんよ(笑)”あぁ、あずきさん。サユとの関係から目を逸らし、婚外のデートを重ねるようになって三年になるけれど、何度繰り返しても初めてのデートほどアガるものはない。先週仕立てたばかりの春物のシャツを着て行こう。靴はどれがいいだろう。当日の天気は?こういう時、女性も同じような気持ちなのだろうか。
   土曜日は約束通りサユと近所にできたスペインバルでパエリアのランチを食べた。サングリアを飲んだので頭が少しぼんやりしたまま、天気も良いので腹ごなしに駅前のヨドバシカメラまで歩く。サユはあのあと新しい洗濯機の候補を5台までは絞った。付箋だらけのパンフレットを見ながら長々と説明をされたがやっぱりどれでも良かった。店に着き店員の説明をひとしきり聞けば、2時間程度で解放されるだろう。  最終的には俺の判断で、見た目が無骨なメタリックで好ましかったパナソニックのものに決めた。古い洗濯機の下取り分を引いても、結構な金額だった。夏のボーナス半分近い額が飛んでしまう。とはいえDINKSの我が家は収入はそこそこある上に家は賃貸、車も持つ予定がないのでこんなところぐらいは金を使うべきなのかもしれない。そのあと夕飯を買おうと立ち寄った百貨店の入り口で、ベビーカーを押す母親のためにドアを開けておいてやるサユ。赤ん坊をみて微笑む姿を見て、目を逸らしてしまった。帰ってシャワーを浴びる間に買ったワインを冷やし、惣菜を肴に録画していたお笑いの2時間特番を観て眠った。  三十路に入りおっさんと呼ばれる年齢になっても、学生時代の夢を見ることがある。よく見るのは「高校に着くまで試験の日だと気づかない夢」だ。真っ白な答案用紙を前に背筋がどんどん冷たくなり、手のひらに汗が滲んで、呼吸が浅くなる。卒業できなかったら、親になんて言えば。せっかく受かったあの美大にも行けない、京都での夢の一人暮らしが……ってとこで目を覚ます。今朝も見てしまった。せっかくの日曜なのに。  サユはヨガ講師をしている。日曜は早朝からレッスンを入れているので、俺が起きると居ないことがほとんどだ。十年前、俺の通っていた美大に絵画モデルとして来ていたサユと知り合った。とにかく骨格が美しくて、デッサンする学生たちの真ん中で座っているまっすぐな背中から首筋のラインを見た瞬間に俺は恋に落ちた。背が高く優雅な物腰で、サユがいるとその場にいる空気がしん、と静まり返るようなところがある。結婚式はとてもシンプルな、裾の長いドレスを着ていた。髪も真ん中で分け後ろで束ねただけだったが、素材が良いのでそれだけで十分だった。サユの講師としての人気は丁寧な指導と同性から憧れられるその容姿も相まって上々らしく、ヨガ雑誌のインタビューを受けたり、ウェアのモデルをすることもある。歳を重ねるほどに美しく、気立ても良く、仕事を持ち自立した妻。サユになんの不満もない。俺の前でだけふにゃふにゃと酔っ払い、洗濯機を選ぶことすら慎重すぎて覚束ないところも可愛いと思っている。ただ俺だけが気づけば妹のようにしか見れなくなってしまっていた。セックスのない家庭は波風もなく静かで、日々はただひたすら穏やかに過ぎていく。夫婦として、それは悪いことなんだろうか。もしも赤ん坊がやってきたら、サユと俺の関係はまた違ったものになっていくだろう。今は滅多にしない喧嘩も、ひょっとしたら増えるのかもしれない。産後に嫁さんの人格が豹変した話を既婚者の男から聞くのは珍しくない。はっきり言って、俺はそれが怖いのだ。    日曜日は晴れていれば布団カバーとシーツを交換する。これはいつも遅く起きる俺の役目になっていて、掛け布団のカバーとシーツを外し、ベッドの下から洗濯済みのものを取り出す。取り出した瞬間、モワッとしたこもった匂いがした。白いシーツのはずなのに、なんだか色も黒ずんでいる。そう言えばバスタオルも、最近色合いがくすんで見える気がしていた。とは言え元に戻すのもなんなので、引き出しの中で一番きれいなシーツを使い、窓辺に掛け布団を干し、ベッドを整えた。
 午後になってコンビニ弁当を食べ終わり、ベランダで煙草を吸っていたところに、サユが帰宅した。あれ、お昼食べちゃったの?ランチ行って映画行きたかったのに。と言うので、今日洗濯機届くやん。と返すと、あ!そうだったね!やっとコインランドリー行かなくて済むね!と心底嬉しそうな笑顔を向けた。  ソファでうとうとしていたら、洗濯機が搬入されていた。サユがあらかじめ段取りよく片付けてくれていたのであっという間に設置作業も終わる。使い方の簡単な説明といくつかの注意事項を告げて、家電を搬入する業者は帰っていった。  「これでタオルもシーツも真っ白になるよ。コインランドリーだとやっぱりきれいにならなかったもんね。夜干しだったし」  「もっと早よ買い換えたら良かったな。」  「でもあれ、いっくんのお母さんが買ってくれた洗濯機」  「え?そうやったっけ。忘れてたわ」  「京都で一人暮らししてる時に買ってもらってたでしょ」  「そっか!そうやった。忘れてたわ」  京都での学生時代、仕送りを貰っていたにもかかわらず俺は家電すら自分で買えなかった。それどころか卒業制作が大変でバイトできない、とかなんとか言って仕送りを増やしてもらってもいた。全く情けない話ではある。付き合い始めたばかりのサユを紹介がてら大阪から出てきた母と食事に行き、穿いていたデニムがあまりに汚いので臭い、洗濯しろと小言を言われた際に、金がないのと面倒なあまり下着やTシャツを手洗いで洗濯をしていることがバレてしまって、呆れて家電店に連れて行かれ、一人暮らしにはやや大きな容量の洗濯機を買ってもらったのだった。そんな一連の出来事を俺はすっかり忘れ去っていた。衣類や寝具の匂いを気にするようになったのはあれからだった。母は俺たちが結婚する前にくも膜下で倒れ、そのまま他界した。俺はもっときちんと洗濯機との別れを惜しむべきだったのか。サユは夕方にも関わらずそれから2回も洗濯機を回した。  サユが洗いアイロンがけまでしてくれたシャツで、あずきさんとのデートに行く俺はやっぱり大馬鹿者だろうな。淡いピンクで気に入っているコットンのボタンダウンシャツ。細い畝のベージュのコーデュロイのセットアップ。晴れていたので白いニューバランスを履いた。夜レッスンの後深夜に帰宅し、まだ寝ているサユを起こさないよう家を出る。夏の新商品に関する打ち合わせの後、新京極にあるドトールの喫煙室で何本か煙草を吸い、念入りに歯を磨く。爪はいつでも短く整えている。  大人がようやくすれ違えるぐらいの路地を進んで店のドアを開ける。待ち合わせの旨を伝えると半個室のテーブルに案内された。あずきさんはまだ着いていない。当然のようにここも禁煙だ。ツイッターを遡ると、あずきさんが家族の夕飯を仕込んでいる写真が現れた。大きな鍋たっぷりのビーフシチュー。てりのある赤茶色のとろんとしたスープに食べ応えのありそうな牛スネ肉がいくつも表面に浮かんでいるのを見て、俺も空腹なのを自覚した。サユには食事を済ませて帰ると伝えてある。  約束の時間から数分経過した頃に、あずきさんがやってきた。写真で見ていた印象よりも華やかなのは、顔まわりの明るい色の髪のせいなのか。茶色いシングルのライダースジャケットを脱ぐ。発色の良いエメラルドグリーンのVネックニットで色の白い肌がさらに澄んで見える。初めまして、ナリユキです。あずきです。ふふ、と一瞬目を合わせて微笑む。料理はコースにしてくれていたので、合いそうなベルギービールを選び、とりあえずの乾杯をした。  あずきさんのご主人は自分でお店を構えて美容師をしているらしく、月曜は子どもの世話を任せられるのでゆっくりできるのらしい。平日の昼間は友人のカフェを手伝ったりもするがそうでない日は映画に行ったり、日曜の夜は子どもが寝てから一人で飲みに出ることもあるらしく、主婦といっても比較的自由な生活をしているようだった。  「なんで裏アカなんか作ったんですか?幸せな奥さんそのもの、って感じやのに」 トマトのマリネを口に運びながら聞いた。回りくどく探るのは好きじゃない。どうしたいのかがはっきりしない関係を、俺は望まない。  「うーん、夫がね。もうセックスしたくないって言うから。お互いまだ四十やし、ほんと言うともう一人ぐらい子どもも産みたかったの。初めは恨んだし、キツく当たったり、わたしが歳とって太ったからでしょうって泣いたりしたこともあるんやけど……、わたしが何しても夫はずっと優しくて、ただひたすら、ごめん、僕が悪い、でもどうしてもできないって。だんだん冷静になってきて、夫にも断る権利があるし、求めるのも申し訳なくなった、って感じかな。今はもう割り切って穏やかに暮らしてる。」  裏アカ界隈ではあるあるな話だ。仲が良いのにレス。というか、DVや借金、働かない、モラハラなどの、明らかに結婚生活の継続に困難をきたすことがあればまずそれが問題になるわけで、それら表立った欠陥がないからこそ、レスが問題になる。表面上はうまく行っていて一昔前なら世間的になんの問題もなかったことが、SNSの普及によりレスりレスられる裏アカたちの覆面を被った本音によってあぶり出されたのが実際のところじゃないかなというのが俺の読みだ。まぁうちも御多分にもれず、だけれど。  店員が金目鯛のバルサミコ煮と二杯目のビールを運んできた。  「最初は料理とか、ボランティア活動とかで発散してれば平和かな?って思ったの。でもさ、子ども産むと変わったのね、身体が。」  あずきさんは睫毛を伏せて、窓の外を流れる鴨川に視線を落としていた。京都には、ちゃんと闇がある。迷えるものが紛れこめる、罪に染まることを匿うような闇。  「ナリユキくんは、どうして?」  毎回尋ねられるので、俺の方は慣れたものだ。妻だけED、妻にだけ欲情しない男であることを手短に話す。風俗も試したけれど、金銭で割り切った関係が好きになれないことも。そう、俺は女性に甘えたり、いちゃいちゃしたいのだ。それにこうして、「獲物」を手に入れるまでのドキドキが風俗にはない。フェミニストたちが聞いたらきっと猛攻撃をしてくるだろうけれど、裏アカの女性たちはひととき、獲物になりたくて俺のフィールドにやってくる。隙を見せて、噛みついてくれと誘ってくる。時折ひらりと身をかわして逃げたり、すんでのところで鼻先をかすめてさらに俺を夢中にさせる。日に日にサユが歳をとっていき子どもが授かりにくくなることも、親が老いていくことも、その間は忘れていられる。浦島太郎みたい、とあずきさんは言った。そうだ、俺の人生は気づくと取り返しがつかないことになっているのかもしれない。あはは、そうやな、浦島太郎。俺は通信会社のCMに浦島太郎役で出ている俳優の「海の歌」をモノマネで歌った。三杯目のビールを飲み干しながら、ぜんぜん似てなーい、とあずきさんは笑った。  シメの料理はビーフシチューだった。この店の名物らしい。あずきさんが昼間作っていたスタンダードなビーフシチューよりも淡く黄土色がかった、カレーかな?と思うような色合いのシチューは、口に入れると深みのある香りが広がる。滋味のある料理が、胃に落ちていくあたたかな感触。添えられていたバゲットと一緒に、あっという間に平らげてしまった。あずきさんは、ここ美味しいでしょう、気に入ってくれて良かった、と最後まで満足そうに料理を頬張っていた。  デザートの苺のジェラートが、火照った頭を心地よく冷やして喉を滑っていった。腕時計を見ると8時半だった。終電までは三時間ある。  「このあとどうします? 俺は、あずきさんを抱きたい」  二人の間に流れていた空気がさらにとろみを増した。あずきさんは、さらに真っ暗になった鴨川を眺めている。一瞬、だけどしっかりと俺の目の奥を見て微笑み、また窓の外を見る。窓に映ったあずきさん自身の影も。  「ナリユキくんってこう言うとき、ほんまに『抱く』って言うんやね」  普段裏アカで使っているボキャブラリーがリアルの会話にも出てくるのは、ツイートの本人が目の前にいることを実感する瞬間だったりする。あずきさんは一つ条件を出した。俺の名刺が欲しいと言うのだ。  「だってこんな年増とはいえ女だから、そう言う行為で受けるリスクはこちらの方が大きいのよ。話してみて悪い人じゃないことはわかったけど、あなたがどこの誰なのかがわからないと、二人きりにはなれない」  今までそんなことをはっきりと言う人は居なかったけれど、これから初対面の男に身を委ねる側の意見としては至極正当だ。真面目だなぁ、あずきさんは。悪用しないでよ?と冗談ぽく言いつつ上着のポケットから名刺を取り出す。自分自身の浮気だってバレるわけだから、俺がよほどの悪事でも働かない限り表沙汰にはしないだろう。あずきさんは一瞥して財布にしまうと、ご主人の美容院のショップカードを出した。これでおあいこでしょ。ご主人の写真が載ってなくてほっとする。このタイミングで容貌を想像したくなかった。ジェラシーを興奮剤にする必要なんかないからだ。  あずきさんが化粧室に立っている間に会計を済ませ、店を出た。路地から通りに出る手前で抱き寄せて軽くキスをし、鴨川沿いを歩く。並んでみると、あずきさんはかなり小柄だ。まだ桜が開く前の、やや冷たい夜風が頰や首筋を抜けていく。月曜の夜にこの肌寒さも相まって人はまばらだったが、来週には気の早い花見客で賑わい始めるだろう。すれ違う人と俺たちを、何層にも重なる薄墨みたいな闇が隠す。河原の上の通りは人がごった返す明るい観光地なのに、川の側に降りるとこんな静けさが俺たちを包み込む。俺の育ったO市にこんな色気のある場所はない。かなわないな、といつも思う。  賑やかな四条大橋を避け団栗橋を渡り祇園方面へ抜ける。月曜の夜とあって、ホテルはすんなりと入ることができた。部屋に入るやいなや……と思いきや、あずきさんは意外に冷静だった。冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し手渡す。  「ちょっと話しましょ」  もう九時前で、終電を考えるとあまりゆっくりしたくはなかったのだけど、あずきさんは怖いのだろうか。隣に座って今日の食事のことを話しながら、抱きすくめるタイミングを伺う。エメラルドグリーンのVネックニットに、黒いシフォンのスカート。薄手のタイツ、ふくらはぎ丈のブーツ。ニットの上半身や、スカート越しにわかる肢体のボリューム。こういうとき、目の前の女性が他の女性と比べてどうだなんて発想が俺には全くわからない。女性に対してそんなケチな向き合いかたをする男が女性を美しくできるわけがないだろう。相対評価じゃなく絶対評価のいい女として対峙するからこそ、艶やかに振舞い、花開いてくれるのだ。俺が出会うのがいい女ばかりなのはつまり、そういうことだ。だから俺はここで自分の昂りを優先させない。  まず手を握り、ゆっくりと肩に腕を回す。警戒を解くように、動いていることに気づかないぐらいの速度で俺の手は腰の方へ降りていく。  「あずきさん、いい匂いするね」  すんなりと首筋に近づき、耳元にキスをする。触れるか触れないかの距離で首元に唇を這わせる。あずきさんが甘い溜息を吐く。唇を重ね、舌をそっと差し入れる。応じてくれる間合いや深さで相手のことが一気にわかるこの瞬間が俺は好きだ。頑なならもう少しほぐす必要があるけれど、あずきさんの舌はすでに熱く柔らかいので嬉しくなる。俺の首に絡みつく腕。セーターの下のキャミソールに手を入れて、たっぷりとした胸の膨らみを撫でる。キャミソールを捲って上半身を露わにする。俺を見上げている、あずきさんの蕩けた眼差し。  「かわいい」  ベッドに移って、身体じゅうに唇を這わせながら丁寧に衣服を剥いでいく。俺は良いと思えば何度でも女性を讃える。少し固い蕾も、俺の言葉と動きに応じて早回しの映像みたいにほころんでいく。嬉しくないわけがない。 「じゃあ、また連絡します。気をつけてね」  急行に乗り込むあずきさんを名残惜しい気持ちで見送って、俺は特急の終電に揺られた。窓の外は奥行きのある京都の闇から、大阪郊外のベッドタウンの灯りが連なる地帯へと飛ぶように移り変わる。あずきさんの住むN市を彼女よりも早く通り過ぎ、サウナやレジャービルの林立するごちゃごちゃしたO市内の大きなターミナル駅をすぎて、俺の地元の駅に到着する。ビジネス街の北の端なので、月曜のこの時間は人もまばらだ。京都よりも少し暖かい気がする。0:32。サユはもう眠っているだろうか。自宅の最寄りのコンビニでシュークリームを買って帰る。  玄関の扉を開け、リビングに入るとサユはまだ起きていた。シュークリーム、食べる?と聞くと笑顔を作ったが、すぐに浮かない顔に戻った。何か怪しかっただろうか?細心の注意を払いつつ、そして注意を払っていることを悟られることのないよう、シャワーを浴びにいく。こんなこと今まであったっけ。  パジャマを着てリビングに戻ると、サユはまだ起きていた。ソファに掛け俺一人がシュークリームを食べ始めても沈黙が続く。胸のつかえを吐き出すように、サユは言った。  「父さんの体調があまり良くないみたいなの」  義父は千葉で農業をしている。年に一度、正月の帰省の時にしか会わないとはいえ、3ヶ月前にはとても健康そうだった。サユに似て痩せ型で背が高く、ベテラン俳優のようなロマンスグレーだが、豪快でとにかく声が大きい。サユはてっきり静かな家庭で育ったのだと思っていたので初対面の時にはかなり面食らった。あの義父が。俺はあずきさんの一件や過去のあれこれがサユの落胆の引き金ではなかったことに安堵する自分の小ささを内省しつつ、サユの背をさすった。  翌月から隔週でサユは日曜のクラスが終わり次第千葉へ帰り、義母と交代して入院中の義父を世話し、夕方のクラスがある水曜にO市に戻るようになった。義父の分の仕事は義母と、普段は会社勤めをしている義兄夫婦が何とか回しているらしい。俺も手伝いに行こうか、と言ってはみたが、仕事あるし、気疲れするよと毎度断られていた。なのでいつもは掃除とゴミ出ししかしないけれど、普段はサユに任せている洗濯もやってみることにした。何と言っても最新型の洗濯機が付いている。乾燥までやってくれるのだから楽勝だろうと思っていたけれど、シーツはパリッとしないし、シャツを干すのとアイロンがけがどうしても難しい。ビジネス用のワイシャツほどきっちりかける必要はないのに、襟と袖口にどうしても小さなシワが寄ってしまう。職業柄服装の規定はないからパーカーでもTシャツでも特に問題はないのだけれど、細身の俺は顔立ちのせいもあって若く頼りなく見えてしまうところが自分であまり好きになれないので、夏でも襟付きのシャツを着るようにしている。  その後もあずきさんとは月に一二度会っていた。花見のシーズンは人出の多い市街地を避け、何のゆかりもない駅のそばのファミレスで待ち合わせ、あずきさんの車で出かけた。食事をする時間も惜しんですぐにホテルに向かってしまうことも少なくなかった。あずきさんは会うたびに貪欲になって、それ以上に、真正面から見つめられると凄みすら感じるほど美しくなっていった。俺はただただそれが誇らしくて逢瀬を重ねた。  あずきさん曰く主婦にとっては「ただ慌ただしいだけ」の夏休みが過ぎた。なおも痛いほどの晩夏の日差しにわずかばかりの緩みを感じられるようになった頃、あずきさんが遠出をしたいと言い出した。十月下旬の連休に、子どものボーイスカウト(男の子一人だと初めて知った)のキャンプとご主人のお店の社員研修旅行が重なって家を空けられるタイミングがあるという。俺は左腕でキャミソール姿のあずきさんの白い腕を撫でていた。研修旅行があるなんて、ご主人のお店は社員がいっぱいいてるねんな、と率直な感想を述べると、さぁ、どうかしらねー、とあずきさんは肩をすくめた。交わっている時からあずきさんの匂いが変わった気がしていたので尋ねると、  「多分洗剤ね。下着はそれ用ので手洗いするようになったから」  あずきさんの下着は繊細なレースのものばかりだ。ああいうのは洗濯機に入れられないのか。女性が女性であるための手間暇を思うと、実に頭が下がる。  「わたし、洗濯って好きなのよね。あの人が外から持って帰った汚れも、わたしのも、ぜんぶ真っさらにしてくれる。」  あずきさんは遠い目をしてうっすらと笑った。  義父の体調が安定したため頻度は落ちたが、看病と稼業に忙しい義母を手伝うためサユは月に一度は千葉へ帰っていた。相変わらず日曜に出かけて水曜に大阪に戻ってくる。十月は実家の繁忙期だから毎週になるかもしれない、ごめんね。そう言って夕食後の皿を下げるサユをみて、更に痩せたなと思う。見かけの割に体力はある方だけれど、流石に精神的にもきついのかもしれなかった。俺が洗うよ、風呂入ってくれば。大人二人分の家事ぐらい、働きながらでもどうってことないのだ。皿を洗い終え、ツイッターを開く。あずきさんと頻繁に会うようになってからは、足がつくのが怖くてあまり呟かなくなった。時々誰かの面白い呟きをリツイートしたり、好みの女性の自撮りにいいねを押す程度。いつまでこんなことするんだろう。始めたきっかけを思い出してみる。たまたま誰かのリツイートで数回流れてきた裏アカ男性のつぶやきだった。彼のツイートはハッとさせられるものばかりでとても気になったのだけど、職業と顔、本名までもを晒している表のアカウントではいいねもフォローもできない。俺はそれで裏アカウントを設けたのだった。その裏アカ男性は婚外恋愛のカリスマのような存在で、女性たちを喜ばせることこそが自らの生まれてきた使命かのようだった。彼のつぶやきはそのうち書籍化され、駅前の小さな書店ですら平積みされるほど売れていた。彼の家庭は今、どうなっているんだろう。俺はそこまでにはなれそうもないけれど、今なら彼の心境も充実感もよくわかる。  先にベッドに入ってうとうとしていると、風呂から上がったサユが珍しく背中にぴったりと引っ付いてきた。後ろから腕を回してくる。いっくん、と囁いた鼻声に向き直ると、目の前に涙目のサユの顔があった。あぁ、やっぱり。俺が手のひらでほおを包むと、サユは唇を重ねてきた。数年ぶりに味わう、サユの少し冷たく薄い舌の感触。厚みを感じない上半身を抱えて、くるりと組み敷く。俺の腰に回してもなお余裕のある長い脚。ひらひらしたサユの舌がだんだんと熱を帯びて絡んでくる。俺は勃起している自分に驚いた。いつかのまま備えられているはずのコンドームを装着しようとベッドサイドの引き出しに手を伸ばそうとする腕を、サユが阻止した。  「つけなくていいよ。……わたし、赤ちゃん欲しい」  夫婦の営みなのだからごく自然であるはずの妻の発言だけれど、正直なところ思ってもみなかった。俺は分かり易すぎるぐらい狼狽え、その心境は何よりも俺のペニスが雄弁に語ってしまった。  「ごめん」  「いいよ。ちゃんと話してからにすればよかったね。千葉の行き帰りに、いろいろ考えちゃって」  俺はサユの洗い立ての髪に口づけをし、背中から抱きしめて眠った。  あずきさんとの一泊旅行の日はあっという間にやってきた。日曜の午後にサユが千葉へと発った後、JRで岡山まで向かう。レンタカーでやってきたあずきさんと岡山駅前で待ち合わせ、昼を食べた後に運転を交代し湯郷までドライブ。ポピー・スプリングスという、スパ施設とエステ、レストランなどが一体になったホテルに泊まる。周辺には鄙びた温泉宿以外に何もないところが良かった。食事以外はずっと部屋に籠っていられる。それに何かで足がついても、俺が居た証拠さえ残らなければあずきさんは女性の友人と一緒だったと言い張れる。わたしのわがままだし支払いは折半でね、と予約はあずきさんがしてくれた。過去に女友達とここで婚前のパーティーをしたこともあるの。だから大丈夫、とあずきさんはいう。そんなアリバイ作りまで、あずきさんは平然とやってしまうようになった。  室内のジャグジー風呂に入りながらシャンパンを飲み、ふわふわと緩んだところでベッドで絡みあった。あずきさんは一回の交わりで何度も何度も達するようになった。その成長ぶりへの愛おしさと、こみ上げてくる裏返しの加虐性が俺の中でせめぎ合う。時間を気にせずにあずきさんとの行為を味わえるのは初めてだった。果てた後は喉がカラカラに乾いて、残っていたシャンパンでは足らないほどだった。  夕食はイタリアンのコースだった。あおさのリゾットが珍しかった。「まぁ、こんなところよね」なんて言いながらもあずきさんは終始上機嫌で、俺はまだ喉が渇いていたこともあり、冷たい白ワインを二人で二本空けた。部屋に戻ってからもまた絡みあい、結局眠ったのは真夜中すぎだった。    俺が目を覚ましベッドからあずささんを探すと、バルコニーで佇んでいた。相変わらず明るい色の柔らかな質感の髪に、大きな花柄が散った胸元のラインが綺麗な臙脂色のワンピース。ウエストから豊かな腰にかけてのカーブの艶やかさは、この年代の女性独特だ。夏の間も全く日焼けしなかったもっちりとした白い肌。どうしてこんなにも綺麗になったのかなと、俺は手放しで感心する。煙草と携帯灰皿を片手に近づくと、あずきさんがわかっていたかのようにぴったりのタイミングで振り向いた。  「おはよう」  「おはよう、なんていうの初めてやね」  「そっか。そやな。おはよう。二回め」 空はすこんと抜けたような気持ちの良い青さだった。煙草に火をつけ、肺いっぱいに吸い込む。  「あのさ。ナリくん、もう会うの辞めない? っていうか、辞めたい」 あずきさんは続ける。  「夫がね、不倫してたの。店の若い子と。知ってたんやけどね。妊娠したんやって。今日はその話をしに先方の実家に行ってるの。祝日なのに店まで閉めて」  「じゃあ、離婚するの? だったらむしろ俺とは会いやすくなるし」  「子どもを見てくれる人が居ない。それに、わたしも早く仕事見つけないと親権取れないかもだし」  「あぁ……」  「それに、余計なお世話だけど、ナリくん奥さんとのことちゃんと考えたほうがいいよ」  あれからずっと考えてたことだった。堂々巡りで放りだそうとしていた問題を、まさかあずきさんから突きつけられるとは。  朝食は食べる気がしなかった。いつ終わってもおかしくない関係なのは、わかっていたはずなのに。あずきさんは、テーブルの向かいで果物のたくさん乗ったヨーグルトや焼きたてのパン、スープなんかを心底美味しそうにペロリと食べた。最初にあった時と同じ笑顔だった。なんでそんな顔で笑えるのか。荷物を取りに部屋に戻り、あずきさんがチェックアウトの手続きをしている間、煙草を吸いながら俺は少しだけ泣いた。  一時間近くのドライブを黙ったまま過ごした。俺はもう何も言えなかった。岡山駅前で車を停め、荷物を持って運転席を降りる。あずきさんも助手席を出る。  「お昼……食べへんよね。じゃあ、元気でね。お義父さん、きっと良くなるよ」  小柄なあずきさんが下から俺を抱きしめる形になった。ふっくらと柔らかいカーディガンの肩ぐちに顔を埋め、思い切り香りをかぐ。俺の背中をとんとんと叩く仕草で、この人は母親なんだなと今更ながら思う。  一度も振り返らず、涙目のまま新大阪行きの新幹線に乗った。大阪に着くのは一時間後、あっという間だ。着くまでに落ち着いて、誰かに会っても大丈夫なよう何事もなかったように過ごさければ。遅かれ早かれこうなるのは分かりきっていたじゃないか、情けない。  明日からまた仕事だけれど、サユが帰ってくるまでにまだ二日あるのが救いだった。バッグの中の着替えを掻き出し洗濯機に放り込んでスタートボタンを押す。脱衣所にへたり込んで、丸窓のなか泡まみれで回る靴下やシャツを眺める。あぁ、『ぜんぶ真っさら』になってしまう。あずきさんとの旅では一枚の写真も撮れなかった。俺はアマゾンで検索した、「洗剤 手洗い 女性下着用」。そして片っ端からカートに入れていった。バカだし、この上なくきもいなと思いつつ、せめてもう一度ぐらいあの匂いを嗅ぎたかった。  水曜の帰りから商品が届き始めたので都度職場近くのコンビニで受け取り、こっそりとカバンに詰めて持ち帰る。我が家の洗濯担当がすっかり板についた俺は、自分の衣類を女性下着用の洗剤で洗う男になった。天日に当てて乾かすとほんのりと香りが残る。香りの邪魔になるので煙草もやめてしまった。あずきさんの香りに近いものはなかなか見つからず、おそらくこれかな、というものに出会うまで実に15種類の洗剤を試した。あずきさんのアカウントは岡山からの帰りにミュートにしたまま、どうにかなりそうで怖くて覗いていない。仮に離婚した、と書いてあっても、どうせ会ってもらえないだろう。きっと俺なんかが想像できないぐらいの修羅場の真っ只中にあずきさんはいるのだ。せめて煩わせないよう、黙って離れるのが彼女への優しさかもしれない。  歳明けの帰省の際にようやく義父の大きな笑い声を聞くことができた。15種類全部の洗剤を使い終わりまた秋を迎える頃、俺は放置していたツイッターのアカウントを消した。直接会って挨拶をしたい女性も何人かいたが、どうしてもDMのページ自体を開く気になれなかった。日曜の昼、リビングでテレビを流し見しつつ洗濯物を畳んでいると、京都の新しいカフェが紹介されていた。聞き覚えのある丸みのある声に振り向く。”カフェ店主 本田あずささん”。なんだ、ほぼ本名だったんじゃないか。少し痩せたあずきさんが、ランチメニューの紹介をしていた。カフェの名前や所在地が紹介される前に、そっとテレビを消す。サユに頼まれていた洗剤がさっき届いた。「赤ちゃんの衣類も洗える液体せっけん」とパッケージにはある。長かった出産の里帰りから、もうじきサユと娘が帰ってくる。
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