俺は1匹狼

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俺は1匹狼

「オラオラ、てめぇらどきやがれ」 騒がしくごった返した食堂が途端に静かになり、周りの生徒が左右に捌ける。 大悟(だいご)は千円札を人差し指と中指で挟み込み、カウンターへ差し出した。 「おばちゃん。いつもの焼きそばパンとあんパン……それと牛乳……な?」 そう言うとパチンッとウインクをする。 「あらあら大悟くん、今日も男前ねえ。はい、どうぞ。それからこれ……お・つ・り」 「サンキュー」 大悟はパンと500mlの牛乳の紙パックの入ったビニール袋とお釣りを受け取りその場を後にした。 その足で階段を駆け上がり屋上へ出ると一面に青空が広がり、澄んだ空気が大悟の頬に当たる。 ここは大悟にとって唯一の"安らぎの場所"だった。 ドカッと地べたに腰を下ろすと胡座をかき、早速パンをかっ食らう。 「大悟さぁーん」 大悟がその声に入口に目を向けると、唯一のダチである1つ年下のチビ、忠志(ただし)だった。 「おう、忠志」 「俺もいいっすか?」 珍しく忠志は体に似合わない大きな弁当箱を手に持って揺すっている。 「来いよ」 「お邪魔さまぁ」 忠志は大悟の隣に座り込み弁当箱を広げた。 「ブッ……、何じゃこれ。沢庵の漬物と玉子焼きだけでほとんど"日の丸"じゃねぇか」 「うち、5人兄弟なんで弁当あるだけマシなんす」 「ご、5人っ?!……母ちゃん頑張ったなぁ。全員"男"かよ?」 「ははは。はい、そうっす。ところで大悟さん、その顔は?」 忠志は大悟の目元の痣や唇の端の傷を指差した。 「あぁ、昨日学校の帰りにイチャモン付けられてよ?」 「結果は?」 「相手は俺様だぜ?のしてやったに決まってるだろうが」 「ですよねぇ。大悟さんにイチャモン付けるなんて自殺行為っすよ」 後ろに撫で付けた黒髪……。身長180cmのガタイのいい体つきの大悟は立っているだけでも充分な"威圧感"があった。 もちろんその分、因縁をつけられたりもするのだが……。そのせいか喧嘩の腕はメキメキ上がり、現在に至る。 大悟の武勇伝は風の噂で尾ひれをつけ、相手を半殺しにしたとか何とかで学校の先生や生徒も大悟を恐れていた。 気が付けば1匹狼状態ーーー 人付き合いが面倒臭い大悟にとってそれは特にどうって事はないのだが……。 なのにこの忠志だけは何故か大悟に懐いてくる。そんな忠志を大悟は唯一可愛がっていた。 ある日、そんな大悟の前に1人の青年が現れる。 藤堂 光(とうどうひかる) 大悟の過去を知る男ーーー
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