愚か者の王子様

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
ある所に、一人の王子様が居ました。王子様はとても美しく、誠実で優しく、国の皆に愛されていました。  ただ、王子様には欠点がありました。それは真面目過ぎると言う事です。いつもその真面目さから、周りの人々を困らせてしまう事がありました。  そんな王子様でしたが、欠点さえ除けば素晴らしい王子様です。未来の王様として、皆から期待をされていました。  ある日の事です。王子様に、縁談話が舞い込んで来ました。  王子様は今までも何度か縁談話がありましたが、真面目過ぎる性格故、上手くいきませんでした。両親は、今度こそはと、二人の全くタイプの違う、お姫様を連れて来たのです。  一人のお姫様は、とても美しく、誰もが目を引く美貌を持っていました。性格は明るく、無邪気でちょっとおてんばで我儘でした。  もう一人のお姫様は、とても醜い姿をしていました。得に目付きが、恐ろしく悪かったのです。だけどとても穏やかで、知的で優しいお姫様でした。  王子様は二人のお姫様と、それぞれ有意義な時間を過ごしました。そしてどちらのお姫様と結婚をするのか、あっと言う間に決めてしまったのです。  なんと王子様は、醜いお姫様を選びました。誰もが驚きました。皆、美しいお姫様を選ぶと思っていたからです。  王子様は言いました。 「私は外見で人を選んだりしない。彼女の心は、美しい。」  そうして、王子様と醜いお姫様は、めでたく結婚をする事になりました。国中が祝福をしました。  しかし、結婚をして暫くすると、醜いお姫様の態度は一転します。我儘を言い、傲慢で、常に誰かの悪口ばかりを言う様になったのです。外見同様、心までも醜くなってしまいました。  王子様は驚きました。 「一体どうしてしまったのだ?君はあんなに美しい心を持っていたのに・・・。」  醜いお姫様は高笑いをしました。 「あんなの、結婚をする為の演技に決まっているでしょう。」  王子様は言います。 「嘘だ、君の心は美しい筈だ。」 「そうだわ‼」  醜いお姫様は、突然思い付きました。 「貴方には死んで貰って、このお城全てを私の物にしてしまいましょう。」 「なんだって⁉」  醜いお姫様の言葉に、王子様は怒ります。 「そんな事はさせない‼君とはもう終わりだ‼」  すると醜いお姫様は、又高笑いをしました。 「お前は分かっていないね。私はね、全てを喰らい尽くすんだよ。お前も、お前の周りも全てね。」  そう言うと、、醜いお姫様の目が、真っ赤に光ります。そして背中からは、真っ黒な大きな羽が生えて来ました。  王子様は驚きました。何と、醜いお姫様は悪魔だったのです。 「己悪魔め、私を騙したな‼」 「騙される方が悪いんだよ。美しい姫を選べばよかったものを。たまに居るんだよ。外見ではない、心だと。だが覚えておくがいい。心の醜さは、外見に出るものなんだよ。」  そう言って、悪魔は王子様を食べてしまいました。  真面目な王子様。愚かな王子様。内心では、美しいお姫様を選びたかったのに、内面で選び騙されてしまいました。  悪魔は美しい者に化けるとは限りません。時に、善意につけ込む事もします。  さてさて、アナタなら、どちらのお姫様を選んでいましたか?
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!