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タイツに足を通す聡美は、「あっ髪っ」急いで靴を脱いだ娘が洗面所に直行するのを見届ける。……五歳にして寝癖をきちんと直すあの子はいっぱしの女の子だ。機嫌を損ねるとどれほど恐ろしいことになるか身に染みて分かっているので、あくまでひとりの女の子として扱う。
「なぎちゃん、行くよー」
「はぁーい」今度は聡美が娘を呼ぶ番だ。
この部屋の鍵を預かるのは大家さんを除けば自分だけなので、慎重に鍵をかけ。そして聡美は走り出す。「待ってー、なぎちゃん」先をゆく娘に追い付くために。
思うに、保育園に子どもを預けるに際し大事なことは、『その保育園が生活の導線上にあるかどうか』。小さいうちは保育園から呼び出されることが多い。自宅やかかりつけの小児科があまりに保育園から離れていると、往復がきつい。電動自転車があればひとっとびではあるが、出勤前に駅から絶対離れたところにある駐輪場に停めるのが大変なのである。
幸いにして聡美の引っ越し先のすぐ近くに認可保育園があり、徒歩で三分。角を曲がってすぐそこ。ありがたい話である。
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