流れ星の嘘

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流れ星の嘘

「流れ星に願いを込めると、願いが叶うよ。」ある晩、夜空を見ながら、おじいさん狐がふと孫娘の子狐に言った。 子狐は、おじいさんのこの言葉を信じ、流れ星を見るたびに、願いを込めた。しかし、その願いが叶う時も、叶わない時もあった。 そして、子狐は、流れ星について勉強した。流れ星の正体は、星ではなく、宇宙のチリであることを知った。流れ星が輝いているのではなく、チリが衝突した大気が光を放っているに過ぎないことも、知った。そして、星は、見えるよりずっと大きな天体であり、本当に落ちてきたら、地球は終わることも、わかった。 そして、子狐は、小さな胸で思った。 「おじいさんは、どうしてあの嘘をついたのだろう?」 子狐がもう少し大きくなると、世界は、こういう嘘に溢れていることを知った。そして、少し大きくなった胸で思った。 「大人は、どうしてみんな嘘つきなんだろう?」 やがて年月が過ぎ、子狐も、大人になった。可愛い狐の子供にも恵まれ、塩にかけて育てた。 ある晩、一緒に星を見ていると、突然流れ星が突然現れ、光を放ちながら、真っ暗な夜空を横切って行った。 そして、一人前の大人狐になった子狐が自分の子供にふと言った。 「流れ星に願いを込めると、願いが叶うよ。」 大きくなった狐が、自分でも、自分に驚いた。そして、思った。 「大人は、どうしてみんな嘘つきなんだろう?」 でも、その答えは、おじいさん狐にも、大きくなった子狐にも、まだ幼い子狐にも、よくわからない。 その答えを知っているのは、夜空の流れ星だけなのかもしれない。
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