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プロローグ
「おーい司。」
首に腕を回され顔を顰める。
「何だよ。」
聡史の腕を払いながら小さい声で聞いてみた。
「明日、大丈夫だよな?」
「明日?」
聡史は大げさに眉間に皺をよせ、司のこめかみをグリグリした。
「いって~、何すんだよ。」
不満げな司に、これまた不満げに告げる。
「お前ねえ、明日の約束、忘れてないだろうね?」
司はハッとしたように目を泳がせ、不自然に微笑んで答えた。
「なーに言ってんだか。忘れる訳ないだろう?」
「本当に覚えてる?お前ってばそういうの、直ぐどっかへやっちゃうだろう?」
「覚えてるよ。11:00に駅前だろう?」
聡史は疑り深げな瞳で司を見ていたが小さく頷いた。
「そうだよ。もうセンター試験(現共通試験)まで日がないから、これで遊べなくなるかもしれないんだからな。忘れるなよ。」
「分かった、分かった。」
リュックを肩にかけ、教室から廊下に出る。聡史が慌てて後をついてきた。「一緒に帰ろうぜ。」
司は小さく笑って頷いた。
センター試験まで後2ヶ月。
そうだよな。もう直ぐみんなとも遊べなくなる。試験が終わるまで、我慢一筋で頑張らなければ。だから明日の土曜日は、聡史たちと何もかも忘れて遊びまくろう。
芝浦司は今年18になる、普通の男子高生だった。高校で付き合った女子もいたが、今は大学受験にまっしぐらの2学期も後半である。司たちはひたすら遊ぶことを我慢して勉学に励んでいた。
司は身長も体重も、見た目も成績も、ごくごく普通だった。テニス部に入っていたが対戦成績もチョー普通で、あまり目立たない生徒だった。しかしそれを悩む訳でなく、普通に高校生活を送っていた。
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