プロローグ

1/2
794人が本棚に入れています
本棚に追加
/333ページ

プロローグ

「おーい司。」 首に腕を回され顔を顰める。 「何だよ。」 聡史の腕を払いながら小さい声で聞いてみた。 「明日、大丈夫だよな?」 「明日?」 聡史は大げさに眉間に皺をよせ、司のこめかみをグリグリした。 「いって~、何すんだよ。」 不満げな司に、これまた不満げに告げる。 「お前ねえ、明日の約束、忘れてないだろうね?」 司はハッとしたように目を泳がせ、不自然に微笑んで答えた。 「なーに言ってんだか。忘れる訳ないだろう?」 「本当に覚えてる?お前ってばそういうの、直ぐどっかへやっちゃうだろう?」 「覚えてるよ。11:00に駅前だろう?」 聡史は疑り深げな瞳で司を見ていたが小さく頷いた。 「そうだよ。もうセンター試験(現共通試験)まで日がないから、これで遊べなくなるかもしれないんだからな。忘れるなよ。」 「分かった、分かった。」 リュックを肩にかけ、教室から廊下に出る。聡史が慌てて後をついてきた。「一緒に帰ろうぜ。」 司は小さく笑って頷いた。 センター試験まで後2ヶ月。 そうだよな。もう直ぐみんなとも遊べなくなる。試験が終わるまで、我慢一筋で頑張らなければ。だから明日の土曜日は、聡史たちと何もかも忘れて遊びまくろう。 芝浦司は今年18になる、普通の男子高生だった。高校で付き合った女子もいたが、今は大学受験にまっしぐらの2学期も後半である。司たちはひたすら遊ぶことを我慢して勉学に励んでいた。 司は身長も体重も、見た目も成績も、ごくごく普通だった。テニス部に入っていたが対戦成績もチョー普通で、あまり目立たない生徒だった。しかしそれを悩む訳でなく、普通に高校生活を送っていた。
/333ページ

最初のコメントを投稿しよう!