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「敦己!?これ…っ、!?」
「はは。ちょっと…失敗した」
――――許せなかった。
理由はどうであれ、二度もお前を奪う権利など誰にある?
が、向こうも粗方予想はしていたのだろう。見事返り討ちにあった。
「歳、とったな…クッソ痛い…」
「なに馬鹿な事を!?携帯っ、救急車を…!」
「携帯も財布も、全部公園のゴミ箱ん中だ」
「…っ、なんでっ!!」
なんで?って
分かっていた、最初から。
(本当に消えるべきなのは俺の方だ。)
俺の選択肢が正しければ、零は自ら命を絶つことはしなかった
金がない。
自信がない。
そんなことは、いくらでもどうにかできたのに…。
「ごめん、な…」
「…っ、敦己。俺は、俺が週刊誌にお前が同性愛だって情報を売ったんだ!貴方が遠くにいかないよう、俺から…っ、離れてほしくなくて!」
隠し通すはずだった真実。
あんなに炎上して、あんな大事になるなんて予想もしていなかった。自業自得を後悔しても、すでに後の祭りだ。
「俺なんか忘れて、いいからっ…幸せになってよ!」
俺と違って、生きて、幸せになっていいんだ!
そう叫んだ。
―――――その必死さを隣で見て、敦己は小さく笑う。
「知ってた」
「え…っ」
情報がどこから漏れたかなんて調べるのは簡単だった。
外でデートするのも、念入りに隠して行ってたし側から見ればイトウアオと仲のいい友人にしか見えない。
それがどうして、恋人同士だとバレたのか…
「それでも、世間を憎んだのは……俺だ。もっと、お前とちゃんと話しておけば…」
「そんなことない!俺の、独占欲のせいで…っ」
「零。…、俺もだ…」
どうしようもない醜い欲ならば自分にもあった。
いつだって死んだこの心を動かしたのは、零だけ
今頃、同僚と対話したあの公園は、人集りが出来て大騒ぎになっている頃だろうー…。
けど、そんなことはどうでもいい。
やっと、長い悪夢の終わりが来た。
「もう俺を、一人にするな。零」
「…敦己、っ俺…俺っ!」
嬉しいと、全身が歓喜に震えている。
青白く息も荒い彼に応急処置も出来ず、事切れるのを見守るしか出来ない最低最悪な恋人なのに…
命の終わりを、待っている。
ぐっと、抱きついて「ごめんなさい」と、縋りつき何度も泣きついた。
「れ、ぃ…ずっと、…」
「…敦己っ、一緒です」
(天国なんて行けないね。)
(二人なら、どこでもいいさ)
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