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「り、伶弥」
「もう絶対に離さない」
伶弥は独り言のように呟いた。
それが却って、伶弥の隠された本心を聞いてしまったようで、詩陽は頬が熱くなるのがわかった。
普段のおふざけとは違った印象を受けてしまったのだから、それが伶弥の意図したものではなかったとしても、狡い気がする。
「待って、ちょっと」
「どうしたの?」
ふと、詩陽は周囲に人が大勢いることを思い出し、慌てて伶弥の胸を押す。
それなのに、伶弥の腕は全く緩む気配がない。
「どうしたのじゃなくて、離してよ!」
「ダメ。詩陽を一人にしたら、危ないもの。ほら、あっちにあるから行くわよ」
伶弥はようやく詩陽の体を解放し、その代わりに素早く手を握った。
大きな手に包まれるように握り込まれ、小さな頃とは違った伶弥を意識してしまう。
詩陽はぽっぽと火照る頬を片手で押さえ、足取りの軽い伶弥に従った。
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