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伶弥は目当てのワンピースを購入できて、ご機嫌な様子である。
詩陽の服なのだからと財布を出すと、鬼のような形相で睨まれ、すごすごと鞄に戻す羽目になったことについては、未だに納得できていない。
「次は伶弥の服だからね」
「私はいいわよ」
「ダメ! 絶対に買うんだからね?」
詩陽は、伶弥の服は自分が買うのだと心に誓い、渋る彼を引っ張って、よく行くお店へを向かった。
結果を言うと、詩陽は買わせてもらうことができなかった。
それどころか、そのお店にあった女性物を目敏く見つけた伶弥に、またしても購入されてしまうことになったのだから、詩陽の心はますます複雑である。
「いい買い物ができたわ」
「伶弥の服を買ってない!」
「今、欲しいものがなかったんだから、仕方がないでしょう?」
「私だって、欲しいものはなかったのに!」
「あら……もしかして、気に入らなかった?」
寂しそうな伶弥の声を聞き、詩陽は我に返って、隣にある顔を見上げた。
眉尻を下げて、大変情けない顔をしている。
「そうじゃないよ。ごめん、言い方を間違えた。二着とも可愛いし、私の好みの服だったから、嬉しいよ。ただ、私も伶弥を喜ばせたかっただけ」
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