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「あれだけ楽しみそうにしてたのに忘れるなんてね。」
わざとらしく振舞う私に気付かないふりをしてくれた真理に心の中で感謝する。
フロアに着き自分のデスクに向かおうとドアを開けると、見慣れないスーツ姿の男がいる。
固まっていると、私をよそに真理が声をかけに行く。
気配に気付いたのか相馬さんが振り向く。
昨日、海で見かけた横顔が思いだされる。
固まっている私をよそにと、真理が相馬さんと挨拶をしている。
低くて心地のよい声が耳に入ると心臓が跳ねる。
男性と付き合ったことはあるが、仕事が忙しくなってからしばらく付き合っていない。
そればかりか、女性とばかり接していて、男性と話すのはよく行くカフェのマスターぐらいだ。
こんな調子で相馬さんと一緒に働けるか心配になる。
挙動不審な私に向かって真理が声をかける。
「ちょっと、凛何してるのよ。」
慌てて相馬さんに挨拶をする。
「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」
簡単に挨拶を済ませると、自分のデスクに向かう。
「ちょっと凛、相場さんにデスクを案内しなくていいの?私が案内するわよ。引継ぎもどうするのよ。」
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