Prologue -S-

1/2
163人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ

Prologue -S-

紫がかった夕陽が、私たちの過ごす部屋を甘く照らしている。 「好きだ……、紗矢花(さやか)」 ベッドの上で低く愛を囁く彼は、私の首筋や背中に口づけていく。 こうして肌を重ねているときだけ、彼に愛されていると感じる。 たとえ、私の他に愛している人がいたとしても。 彼と繋がっていられるこの瞬間は、私だけのモノなのだと信じられた。 「私も……好き」 かすれた小さな声で私は応える。 「私のことだけ、見て」 懇願にも似た台詞を言いながら、シーツを握りしめた。 「見てるよ。当たり前だろ?」 苦笑混じりの言葉に安心した私は、そのあとは彼にすべてをゆだね、彼を悦ばせるための声をあげ続けた。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!