スティル・イン・ザ・ダーク MOD(適宜修正中)

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 ふっとバックライトが消えて視界が暗闇に戻った。何の音もしない。棺の冷気が俺を不安にさせる。目を閉じても、目を閉じなくても同じ。まるでこのゲームに参加するまでの俺たちのようだ。  俺たちはある日突然莫大な額の賠償金を背負わされた。事故だった。高速道路に人が歩いているとは誰も思わないだろう? 急ブレーキしても間に合わず却って後続車とも衝突し、玉突き事故で死者が出た。運転者と歩行者では運転者が悪い。そういう法律。俺はどうすればよかったんだ。  途方に暮れて、死のうかとも思った。俺たちには夢があってそのためにこれまで頑張ってきたのに、そんなものは世の中の仕組みの前では簡単に木っ端微塵だ。でもこれで、俺たちは元の生活に戻れる。そう思った。  鼻を動かすとかすかに土の香りを感じた気がした。静寂。何も聞こえない。今俺の上の方でミキがスコップで掘り出してくれているはずなのだが。不安。  思えば普通は掘るのは女ではなく男の役割。この配置からもミキが造園業者で土を掘るのが早いことが織り込まれているはず。それに一度掘り返された土ならそれほど硬くはないだろう。いや、転圧機があるということは突き固められたのか。それを示すためにおいていったのか? 意図はわからないが位置関係は把握できた。掘り返せないほど固めるならばゲームは成立しない。時間はそれほどロスしていない。おそらく大丈夫、だろう。そう祈る。
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