1.薄氷の上で笑う

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 丸一日、石材運びの仕事をして、銅貨二枚と鉄貨四枚だった。  帰り道、パンを二つと母の薬を買うと全てなくなった。けれど、齢十の俺が働ける場所を貰えるだけありがたかった。  丸一日何も食べてないせいか、腹の虫が低く鳴る。盛りとはいえ今年は冷夏。夕暮れ吹く風が、汗で冷え切った身体に堪えた。  鉛のように重い身体で家路を急いでいると、通りの向こうから先触れが何か喚きながら走ってきた。 「流行病の元凶の魔女が捕まったよ! これから西の広場で火刑が始まるよ!」  そう言っているのが聞こえた時、俺は疲れも忘れて先触れにしがみついた。 「それは本当のことですか!?」 「ああ! 間違いないよ! 司祭様達の神判で魔女が見つかったんだ! これで流行りの病も全てなくなるだろう!」  それを聞いた俺は喜びと安堵で、崩れ落ちた。 「よかった……。よかった……」  安心したせいで、自然と涙が目にたまって視界が滲む。 「辛かったんだな。でももう安心! 魔女はもう殺される」 「はい……、ありがとうございます。これで母も……!」 「そうか。よかったな。さぁ、早く母君に伝えておやり」
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