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第1話 アナタに【真犯人は決定】✨😜✨💕💕
「おめでとうございます!」
いきなり美少女アイドルにしてAI刑事の阿井アイが容疑者の龍宮 真太郎に頭を下げて微笑んだ。
長く流麗な髪がフワリと舞った。
まるでステージに天使が舞い降りたようにアイドルスマイルを浮かべている。
可愛らしいことだけは認めてやろう。
けれども、どう考えても可笑しな恰好だ。
殺人現場には、相応わしくないアイドル全開のコスチュームを身に纏っている。
淡いピンクのフリフリのミニスカートだ。
下から覗くとパンツが見えそうなくらい丈が短い。
むしろパンツを見せる気満々の衣裳だ。
どうせ見せパンだろうが。
彼女は売れない地下アイドルグループ『エッチし隊』のセンターだと言う話しだ。
確かに、少しだけエッチで可愛らしい。
しかし、こんな悪戯けた恰好の美少女アイドルがオレの相棒かと思うと目眩がしそうだ。
「はァ……、なにがだよ?」
容疑者の龍宮真太郎は美少女アイドルを鋭い眼差しで睨んだ。
当然だろう。
彼にしても唐突に、美少女アイドルから、『おめでとうございます』と言われても何のことか、皆目検討がつかない。
傍から見ても面食らっているようだ。
夏の日差しが容赦なく降り注いでいた。茹だるような暑さだ。
屋外は、すでに四十度近い。今日も間違いなく酷暑日だ。
昼間、何人も熱中症で病院へ救急搬送されている。
ここは、龍宮家の広大な庭に設置されたプレハブ小屋だ。小屋と言っても仮設住宅にもなるくらいの広さはある。
独身男性がひとりで暮らすなら充分な広さだ。
適度にエアコンが効いているので助かった。オレが蹴り倒した引き戸も修理したようだ。
被害者の龍宮真二郎は、このプレハブ小屋の中で亡くなっていた。
硫○水素による中毒死と言われている。
詳しくは言えないが、いわゆる『混ぜるな危険』と言うヤツだ。
遺体は、密室状態で見つかった。
このプレハブ小屋の中で発見されたのだ。
しかも発見したは刑事のオレたちだった。
もしこれが他殺ならば『密室殺人』と言うヤツだろう。ミステリーマニアには堪らないシチュエーションだ。
オレとAI刑事、阿井アイは偶然、この龍宮家に居合わせ捜査に当たっていた。
そして庭に設置られた離れのプレハブ小屋で亡くなっている龍宮家の次男 真二郎の遺体を発見したのだ。
阿井アイはアイドルスマイルを浮かべ、得意のダンスを踊りながらポーズを取った。
「すべて謎は、このAI刑事 阿井アイに解かれたがっているのよ!!」
どこかで聞いたようなセリフだ。
昔、流行った美少女アイドル戦士のヒロイン気取りだろうか。
「な、何ィ……? バカなことを」
また龍宮真太郎の眼差しが険しくなった。
「真犯人は、龍宮真太郎さん!!
アナタに決定!!」
まるで阿井アイは新曲のタイトルを発表するようにクルクルと舞って容疑者を指差した。
また流麗な長い髪が弧を描くみたいに舞っていく。
仄かに美少女特有の甘いピーチの香りが漂ってくる。
「はァ……」容疑者の龍宮真太郎はバカバカしいと言う表情で、そっぽを向いた。
「ねえェ……、ポチ!
時間がないから取り敢えず、彼を逮捕しちゃいなさい!」
阿井アイはオレの腕時計で時間を確認し、顎で指示を送った。
「はァ……、ポチじゃねえェよ!
ふざけるなよ。オレの名前は星だ!
星ヒカルだ!!」
コイツは初対面からふざけたヤツだ。
いくら星ヒカルだと注意してもオレの事を『ポチ』と呼ぶ。
被害者が住居として使っていたプレハブ小屋の中は惨憺たる状況だ。
アニメオタクだけあって部屋じゅうにアニメのポスターが貼ってあった。
それだけではない。床には丸めたり折られたりしたポスターの残骸が山のように敷いてあった。
その残骸の山の上に龍宮真二郎の遺体はあったのだ。
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取り込み中なので手短かに自己紹介しておこう。
オレの名前は、星ヒカルだ。
決してポチではない。
まるで、昭和のセクシー女優のような名前だが、これでも元ヤンキーのれっきとした男性だ。
SixT○NESのジェ○ーに似ていると言われる。もちろん、あれほどカッコ良くはないが。
かつては捜査一課でバリバリの刑事だったが、ある上級国民のバカ息子を殴ってしまい今はAI課サイバー対策室へ配属されていた。いわゆる島流しと言うヤツだ。
そこで面倒をみているのが、この美少女アイドルの阿井アイだ。
タブレットを片手に事件を捜査する特別捜査官、通称AI刑事らしい。
年齢不詳だが、どう見ても女子高生にしか見えない。少なくともオレよりはかなり歳下だろう。
しかし彼女は、まったくオレの事を先輩だとは認めていないようだ。
年がら年中、オレの事を顎で命令してくる。
「ポチ!! あとでドッグフードを上げるから大人しく彼を捕まえちゃいなさい!!」
また美少女アイドルは顎でオレに命じた。
「だから!! 何度も言ってるだろう!!
オレはポチじゃねえェッてェ……!!
お前、女の子じゃなかったら、とっくにぶん殴ってるトコだぞ!!」
拳を振り上げたい所だが踏みとどまった。
女の子を殴る趣味はない。
しかも昨今はパワハラなどハラスメントにうるさいので下手に威嚇すワケにもいかない。
「フフゥン……」
阿井アイはまったく動じる様子も見せず、余裕の笑みを浮かべている。
「チィッ!!」オレは軽く舌打ちをした。
元ヤンキーとしては、こんなガキにナメられるなんて最悪だ。
しかしオレたちが龍宮家へ招かれたのは、果たして偶然だったのだろうか。
手っ取り早く事件の概要をまとめると、こう言うことだ。
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