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願い
私はかつて人間であった。
いわゆる「ホモサピエンス」であった。
会社に勤め10年を越えると、後ろから押し出されるように役職がつく。
所謂中間管理職となり、私は日々の業務に忙殺された。
(ああ、やってられない……)
忙しいと言う文字は心が亡くなると書く。誰が思い付いたのか知らないがうまいことを言うものだ。
まさにその文字の通り、忙しい日々に私の心は殺された。
眠れない夜が続いても、間違いなく朝は来る。寝不足の頭は思考を鈍らせ、精彩を欠いていく。
世界は色を失い、灰色のモノトーンに塗りつぶされる。
周囲は常に騒がしい。ザワザワザワザワとくぐもった声で私の思考を邪魔する。
(ああ、やってられない!)
私は願った。
「ラブカになりたい」
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