Liar planet

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*  コールドスリープから「R I N A 20」が目覚め、三週間ほど経った頃、セツが夜になるとカプセルを抜け出していることに気がついた。向かっている先は森で、リナはこっそりと後を付けた。  暗闇で誰かと話しているセツの声が聞こえ、リナは内容を盗み聞きした。  言っていることは難しかったが、どうやら誰かに報告しているようで、それはリナについてだった。  セツの声は一緒にいるときと違い、冷たく別人のようだった。  黒い機械に向かって話をしているセツ。  柔らかい寂しそうな笑顔の彼はどこに行ったのかと、リナはかなしくなった。  けれど、目覚めて最初にセツが名前を呼んでくれたあの暖かい日差しと森の匂いを思い出し、ふいに泣きたくなった。 ―――たくさんの人が助かるのなら力になりたい。  何よりセツがそれを望んでいるのであればーーー、と、リナはクチナシの木に隠されたものは見なかったことにした。
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