私たちは友達です

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「ふー、今日も疲れたな。」 「やっぱビールはうまいっすね。」 「いよいよ、局(つぼね)ちゃん、明日帰ってくるのかー。」 「はー、ヤダヤダ平和も今日で終わりか!」 「そーいえば、またバイト募集するらしいっすよ。」 「恒例になってきたな、この時期。まあ、今年も続かないんだろうねー。」 「おはよー」 「早速面接、来たらしいよ。」 「なんか、いー感じには見えたってさ。」 「局ちゃんより年上かもって。」 「へえ、ぶっ飛ばして欲しいなー。」 「社長面談もやってるって!」 「うぉ、こりゃ脈ありだな。」 次の日、やってきたアルバイトの女性、木戸未華子は、社員全員が嫌っている、局ちゃんこと、三原百合に挨拶をする。 「よろしくお願いします。」 「パソコンはどのくらい使えるの?」 「まあ、ある程度は何でも。」 「ふーん。」 「じゃあ最初はネット画面での操作からね。これが、ウチのシステム。毎朝来たらログインして、メールのチェック、返信、まあ、最初はこの繰り返し、商品がわかるようになるまでは、この画面からウチのサイトで扱ってるもの、調べながら質問に応えて。」 「えっ、私が、返信していいんてすか?」 「それが、仕事よ、なにか文句ある?」 「あっいえ、商品のこと何もわからないのに、勝手に返信して大丈夫なのかと思って。」 「近藤ー」 「はい!」 「今のが、商品担当、わかんないことあったら、彼に聞いて。」 「あっ、えっ、はい。」 振り向くと、小さく手を振ってくれている。あっあの人が。 「東さーん。」 「はい!」 「で、今のがクレーム担当ね。やばそうなのは、彼に。」 「錦田!」 「はーい。」 「彼は。ウェブ担当。ホームページに書いてて、わかんないことあれば、聞いてみて。一応隣に座ってるのが、アシ。最近あの子がアップしてるとこもあるらしいから、間違いとかもあるかも〜。変なん見つけたら即報告。」 「はい。」 「で、こっちが、顧客管理ね。問い合わせメールが入って、買った商品のことだったら、顧客管理で買ったものとか、買った日、発送日なんかがわかる。」 「ま、3日間は、試用期間だから。やれるなりにやってみてー。」 「あの、過去の返信メールとか、参考に見せてもらっていーですが?それから、テンプレートみたいなものあります?」 「テンプレもあるよ。ここ、これ一覧ね。適当に開いてみて。」 「あっ、そうだ忘れるとこだった。顧客管理の番号と、メールの紐付けね、大抵はIDで紐付いてるけど、会員じゃない場合やログインしてない問い合わせは、名前、電話番号で、検索、一致。で、仮紐付け。こうやって、こうねー。いい?」 「はい。」 「じゃ、まあ、午前中は、商品の勉強しといて、よろしくー。」 そう言うと、彼女はその場を立ち去った。 (ふー、あんなんで、みんなわかるのかな?) (単なるアルバイトにやらせるには、ちょっと無理があるような気もしなくもないが。まっいいか。) とりあえず、今聞いたことを、ささっとまとめて、ノートにメモし終わると、未華子は、席を立ち、斜め後ろに座っている女性に挨拶をする。 「始めまして、木戸未華子です。よろしくお願いします。」 風貌では、割とベテラン感を出している彼女だが、とてもおどおどししていて、小さな声で 「あの、あなたと同じ仕事をしています。な、何かあったら聞いてもらっても大丈夫です。あ、あの、三原さんが居ない時に。」 と言われた。 「そうなんですね。有難うございます。心強いです。あのお名前聞いてもいいですか?」 「あ、有田です。」 (三原さんは、この人のことには一切触れなかったけど、なんでだろう?) 2つ後ろの席にはウエブ担当の錦田さんと、米川さん。さらに後ろに、近藤さんと、藤野さん、藤野さんは、プログラマーらしい。 クレーム担当と言われていた東さんは、既に席には居なかった。 一日、なんとかかんとか終えての帰り、 「お疲れー、未華子。初日どうだった?」 「疲れたわー。マジで。」 「へえ、お前がそんなこと言うの珍しいな。」 「なんかねー、陰気なのよ。」 「へ?」 未華子が、駅で待ち合わせていたこの男の名前は、国重裕二、裕二とは、大学の同級生、大学時代から仲良くしてて、社会人になっても、時々こうやって会っている。歳は彼の方が一個上で、今年35歳、私が、34歳、周りから仲がいーので誤解されることもあったが、私達は単なるお友達。 なんだかんだで、付き合いも15年になる。気心知れた相手。あいつの歴代彼女も良く知っている。顔はそこそこなのに、意外にモテる。なんだろーねー、コイツは。まあ、優しいからねー。根本的には。本人は、マメでもないし、何で俺なんかいーんだろーねーなんて言ってるけど。
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