あまい匂いが誘拐する

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「なに真に受けてんだよ、ブス」 「ええ、マナ、口悪い」 今日は不機嫌な日らしい。基本的には優しい幼馴染だが、たまに意地悪になる。昔そのことをマナの兄に相談したら、「男は好きな子にいじわるになる生き物なんだよ」と言われた。その時はその説明で納得できたけれど、今は別だ。 中学二年ごろからか、マナの口調が少し悪くなった。良い言い方をすると、男っぽくなったのだ。そのころから、定期的にブスと呼ばれるようになった。初めて呼ばれた時には驚いたけれど、今となっては当たり前の事実として受け入れている。 私はブスらしい。別に、だからと言って何かがあるわけではないけれども。 乱雑に髪を撫でられて、「ちょっと」と呟いた。ぐしゃぐしゃに乱されたそれはなかなか元に戻らない。むっとして前を見ると、至近距離でマナが「やっぱブス」と笑った。 「女の子に、そういうこと言っちゃいけません」 「へぇ、萌って女だったんだ」 「もう、はやく部活行きなよ、モテモテエースさん」 「へいへい」 ブスだと言われることには慣れた。別にいちいち傷つくことじゃない。マナが言うことだからきっと事実だし、ブスなものは仕方がないと割り切った。
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