2437人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
「なに真に受けてんだよ、ブス」
「ええ、マナ、口悪い」
今日は不機嫌な日らしい。基本的には優しい幼馴染だが、たまに意地悪になる。昔そのことをマナの兄に相談したら、「男は好きな子にいじわるになる生き物なんだよ」と言われた。その時はその説明で納得できたけれど、今は別だ。
中学二年ごろからか、マナの口調が少し悪くなった。良い言い方をすると、男っぽくなったのだ。そのころから、定期的にブスと呼ばれるようになった。初めて呼ばれた時には驚いたけれど、今となっては当たり前の事実として受け入れている。
私はブスらしい。別に、だからと言って何かがあるわけではないけれども。
乱雑に髪を撫でられて、「ちょっと」と呟いた。ぐしゃぐしゃに乱されたそれはなかなか元に戻らない。むっとして前を見ると、至近距離でマナが「やっぱブス」と笑った。
「女の子に、そういうこと言っちゃいけません」
「へぇ、萌って女だったんだ」
「もう、はやく部活行きなよ、モテモテエースさん」
「へいへい」
ブスだと言われることには慣れた。別にいちいち傷つくことじゃない。マナが言うことだからきっと事実だし、ブスなものは仕方がないと割り切った。
最初のコメントを投稿しよう!