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プロローグ
これでもかと言うくらいに着飾ったわたくしは、今日の主役。
黒地のレースをたっぷり使って、腰からふんわり広がるドレス。胸元には薄い紫と水色のリボンで作られた花が散りばめられている。
色素の薄い水色のストレート髪は夜会巻きにされ、頭に固定されていた。そのせいで、元々のつり目が更に上がったように感じる。
だけど、この豪華さで誰が主役なのかひと目でわかるのだから悪くは思わない。
本日、王宮でわたくしの誕生日パーティーが行われるのだ。王宮で行う理由は簡単。
わたくしが王太子であるトーマ・ハルディオ様の婚約者だから――。
通常のパーティーは、婚約者にエスコートされて会場に入るけれど、今回はわたくしが主役なので1番最後に登場して欲しいと言われている。
そのため、控え室からひとりで会場に向かった。
「ウィルド侯爵家のレティシア様がいらっしゃいました」
会場の扉を守っている騎士がそう中に呼びかけると、会場に居た全員がわたくしに視線を向けた。
その視線全てが、わたくしを祝っているのだと思うと嬉しく感じる。
凛と正面を向き、わたくしは1番奥の祭壇に居るトーマ様の元へ優雅に歩きだす。
もちろん、周りにいた人達はサッと私の通る道を作る。そのため、一直線に向かうことが出来た。
祭壇の上にはトーマ様と、トーマ様のお父上であるこの国の国王様が居る。
わたくしは祭壇のひとつ手前まで行き、優雅にカーテシーをした。
「国王様、トーマ様、本日はわたくしの祝いのための席を設けて下さりありがとうございます」
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