6. 自分で頑張るって決めたから……

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 ニ階の一番端にある扉の前で足を止める。  本来なら【201 宮野】と書いてあるはずの表札が、焦げ跡でほとんど見えない。  通路や壁はびしょ濡れで、昨夜の懸命な消火の様子を物語っていた。  黒く煤けたドアが目の前にある。  「何を見てもパニックにならない……。自分で頑張るって決めたでしょ」  手の中の鍵をグッと握りしめて、そう自分に言い聞かせた。  鍵を差し込んで回し、ドアをゆっくりと開いた。  「―――!!」  そこは案の定、水浸しだった。  「……ひどい………」  分かってはいたけれど、口に出さずにはいられないほど酷い惨状。  床一面が水に浸かっていて、天井からも水がポタポタと落ちてきていた。  壁は煤で黒ずんでいる。  とても靴を脱いで上がるような状態じゃないので、私はそのまま靴で部屋の中へと進んだ。  あっという間に靴の中までびしょびしょになる。  「あはは、こんなことなら長靴に履き替えれば良かったな」  なんだかショックを通り越して、もう笑うしかない心境だ。  キッチンを通って部屋に入ると、そこもすごい惨状だった。  火災現場に面していて消火が激しかったのか、窓ガラスは割れてベッドの上に落ちているし、もちろんどこもかしこも水浸しか煤だらけ。  お気に入りのランプシェードも、家族旅行の思い出のサンキャッチャーも、あちこち探してやっと決めたカーテンも。  すべてが滅茶苦茶。    「~~~~っ!」  覚悟は決めて来たし、外の状態から正直諦めもついていた。  だけどやっぱりこんな酷い部屋を目の当たりにして、涙が盛り上がって来るのを止められない。  わたしは涙をこぼすまいと我慢して、壁際に備え付けた大きな本棚の前に向かった。
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