エピローグ

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 みんなで柚子酒を飲んだ後、吾郎くんを二階の私の部屋に案内した。  こんな展開になるとわかっていたら少しは掃除しておいたのに、しっちゃかめっちゃかな部屋で恥ずかしい。  それでも吾郎くんは「女の子の部屋って感じだね」と照れ臭そうにしているから、小物が多いのは女性ならではということにしておこう。  窓を開けると、少しだけ涼しい風が部屋の熱気を和らげてくれた。 「柚子ちゃんと結婚の約束しちゃった。何だか夢みたいだ」  出窓の下の壁に背を預けて座った吾郎くんが、嬉しそうに指を絡めてきた。 「うん、夢みたいだね。でも、まだ婚約したとは言えないよね。別に結納なんてしなくていいけど、吾郎くんのご両親に改めて挨拶に行って認めてもらわないと」  吾郎くんはうちの家族に大歓迎されているから、甘い感慨に浸っていられるのだろう。  こっちは彼氏の両親や兄夫婦に猛反対されるかもしれないって言うのに。 「え? 先週紹介したんだから、電話で『婚約した』って報告するだけでいいんじゃない?」 「吾郎くん、それは軽く考えすぎだと思う。結婚は二人の合意があればできるけど、親兄弟だって姻戚になるんだからちゃんと認めてもらって祝福されたいよ、私は」 「そっか。そうだよね。じゃあ、とりあえず今夜電話で報告しておくから、挨拶に行くのは仕事のスケジュールを把握してからかな。新しい仕事が始まって忙しくなるけど、なるべく早くきちんとしたいから」  吾郎くんは「指輪も買いに行こうね」と私の薬指を弄びながら囁いた。  今は何も嵌っていない指にエンゲージリングやマリッジリングが輝く日が来る。そう遠くない未来に。
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