四十六日目(1)

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 僕はそれによって、記憶が上書きされていくような気がして、すこし不安になる。  すると彩乃が、「あの人の事、嫌いになったのですか? わたしで良ければ、お話を聞きますから」と、恥ずかしそうにする。  指先で鼻梁をさわろうとして、僕はその動きを止めた。繋いでいるのとは逆の手を、ぎゅっと握り込む。  歩きながら、雲のない透き通った青空を見あげてみる。雪雄の『正当な復讐』を手伝いながら、その生き方の一部分に触れた。  それが、気持ちを言葉にすることの大切さを、僕に理解させてくれた。彩乃の顔をじっと見つめて、心持ちを鎮める。  僕は、仮面のように纏っていた微笑みを、いつもよりほんのすこし差しひいた。
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