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いつからだろう?
旦那に対して腹が立つことばかりなのは。
こんなはずじゃなかった、と思う。
優しい人だった。
おとなしく、私のことを守ってくれる人だと思った。
出会った頃、旦那にはバツが1ついていて、2度目の結婚をしてた。
私には1、離婚したばかりだった。
つまり今は旦那にとって私は3番目の妻。
私にとっては
2人目の旦那。
思い返せば、私が離婚して間もなくの頃、まだ2番めの結婚をしていた旦那と出会った。優しそうで大人の雰囲気を出していたからか、その時の私が離婚してまもなくで弱っていたからか、惹かれて強くアピールしたのは私だった。
不倫なんてするつもりはなかったんだけど、結婚している旦那が幸せそうに見えなかったんだよなぁ。
それでつい
「今すぐ離婚してこい!私が幸せにしてやるから」
なんて言ってしまって今にいたるわけで。
あ、略奪婚じゃん、私。
出会った頃は、この人の何もかもが好きだと思っていたのに、違った。
2番めの結婚を終わりにさせて入籍したときは、私ってなんて幸せなんだろ!とか思ったのに。
カリカリと餌を食べていたタロウが、旦那がいる和室の前で鳴き始めた。
「にゃーん、にゃにゃん」
前足で、襖を開けようとしている。
「ちょっと、タロウが中に入れてって言ってるから開けてやって」
スッと10センチほど開いて、タロウを招き入れる旦那。
座ったままの旦那の頭頂部が見えた。
あれ、あんなに薄かったっけ?
なんてあらためて思った。
9才の年の差は、意外と大きいな。
一旦閉まった襖がまた開いた。
「あのさ、明日から長期の出張だから」
「は?どれくらい?」
「半年は帰れない」
「あ、そう」
「タロウを頼むわ」
「それだけ?」
「…うん」
他に言うことあるでしょ?と思ったけど。
まぁ、いいか。
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