ファンクラブ

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ファンクラブ

私は桜子さんの事が気掛かりだったけど、そう先生に言われて立ち上がろうとした。 しかし私のスカートの裾を桜子さんが泣きながら掴む。 「桜子さん?」「神宮寺?」 私と先生の声が重なった。 「先生…私が悪いの…」 涙声で先生を見上げる桜子さん。 「…解った。千夜と神宮寺。話は保健室で聞く。一緒に来い」 先生は桜子さんの手をそっと掴むと、私のスカートの裾から桜子さんの手を離した。 それからが1大事だった。 保健室に3人で向かう途中、別の先生も私達を見つけて、私が見つかった事を伝達してくれた。 でも今回の軟禁事件は理事長の耳にも入った。 教師の不手際だと言う事で、先生方の何人かは謹慎や減俸処分になり、理事長も自ら家に謝罪に来た。 桜子さんも、停学になり、学園に来ない日が続いた。 そんな頃…。 朝、教室に入った私を見た男子達がニヤニヤ笑いながら言う。 「何だブス。中退したんじゃねーのかよ?」 「誰がブスですって?」 私がそう言い返す前に、私の後ろから声が聞こえてきた。 驚いて声も出ない男子達に、私も驚いて後ろを振り返る。 と、久々に桜子さんが取り巻き達を引き連れ、腕を組んで立っていた。 「雅をイジメたら、私達女子が許さなくてよ!」 桜子さんの声が教室中に響き渡る。 「おい、どうなってんだ?」 「俺が知りてーよ」 男子達が騒つく。 私の脳裏に、いつしか鈴木研究員が言っていた『一見、近寄りづらい人でも接し方次第で友達になれる』という言葉が甦る。 今なら…桜子さんと友達になれるかもしれない。 「お帰りなさい、桜子さん。私達友達にならない?」 そういって手を差し出すと、桜子さんは一瞬驚いた様に動きが止まったが、やがてその手を握り返してくれた。 「雅…ありがとう」 「桜子さん…」 私達は予鈴が鳴るまで笑顔で見つめ合っていた。 数日後のお昼休み。 「鈴木研究員のファンクラブ?」 私はすっかり仲良くなった桜子さんに思い切って提案してみた。 桜子さんは始めこそ驚いた様だったけど、やがてその表情がイキイキとしてくる。 「良いじゃ有りませんの!ファンクラブ立ち上げましてよ♡…ただし」 「た、ただし…?」 「先日の様な抜け駆けは無しですわよ♪」 「うん!そうだ、桜子さん。お弁当一緒に食べない?訳言って2つ作ってもらったの」 「ええ、喜んで!」 勉強、家事、ファンクラブの活動…これから忙しくなりそう。 桜子さんとお昼ご飯を食べながら私は心の中で言う。 鈴木研究員、高校生活楽しいです! 完
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