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ときの人
パラサイト。
まだ私が産まれる前の事。
パラサイトのウイルスに感染した人達は、皆巨大な化け物になる。
そして、人々を襲っていた。
でも、私のお父さんの友達がワクチン開発に成功する。
そのお陰でパラサイトは終息した。
お父さんの友達…鈴木航さん。
パラサイトの一件で、その人は一躍、有名人になった。
テレビやラジオに出たり、学園や公民館でスピーチをしたり。
鈴木研究員は、そのルックスの良さも有って、ファンレターをアイドル並みに貰っていたらしい。
鈴木研究員本人としては、研究に没頭したいそうだ。
けど、マスメディアが鈴木研究員を離さなかった。
私…千夜雅は、お父さんをパティシエに、お母さんを男子校の先生に持つ、高校生だ。
清良学園と言う共学に通っている。
「ふわぁ…おはよ。まだ眠いよ」
ある朝、学園に行く準備を整えて、リビングで朝ごはんを食べに来た私。
リビングに面したキッチンで、お父さんが3人分の朝ごはんを盛りつけていた。
「なら、これ食ったら今日は、さぼっちまえよ」
「貴方、雅に余計な事言わないで。…雅、学園には、きちんと通わないとダメよ」
私の直ぐ後からリビングに来たお母さんは、そう言うと椅子に座る。
「今の初夏は、屋上の日陰が昼寝し易いぜ」
お父さんは、お母さんの言葉に悪びれもせずにトレーにワンプレートの朝ごはんを3人分テーブルの上に置いて言った。
「貴方、私の言った事、きちんと聞いてた?」
私と一緒に椅子に座るお父さんをお母さんがジト目で見るけど、女子の私から見ても迫力が無い。
まあ、お父さんも冗談で言っているんだろうし、お母さんは真面目に受け止め過ぎるのか冗談の通じない人だ。
「良いなぁ…仲良くって」
私が思わず洩らした言葉に、お母さんは照れた様に朝ごはんを食べ始めて、お父さんはテレビをリモコンでつけながら私に言う。
「そう言う雅は彼氏居ねーのかよ。…と、鈴木の奴、またテレビに出てるな。最もこの番組は再放送か」
お父さんの言葉に私は何げ無しにテレビを見て、持っていた箸をテーブルの上に落とした。
「カッコいい!やばい!ヤバすぎ!!」
テレビに映っているメガネを掛けた切長の瞳のスマートな男性が、スーツ姿で司会兼アナウンサーと何やら対談してる。
話の内容は難しくて、よく解らないけど、声もイケボで聞いているだけで、心地良い。
「何だ、雅。鈴木が好みなのか?」
「えっ!鈴木って…お父さん、この人、知ってるの?」
「知ってるも何も高校からのダチの1人だ」
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