プロローグ 流れ落ちた星

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プロローグ 流れ落ちた星

「わぁ、見て見てサナ、テレビで言ってた彗星(すいせい)ってあれじゃないか?」  双子の妹のユナが興奮しながら空を指さす。私は真っ黒い夜空をじっと見つめた。 「どれどれ? 全然見えない」 「ほら、あそこだよ、サナ。見えるだろ?」  ユナが伸びをして必死に空を指さす。  ユナの指さした方向に目をやると、今度は私にもキラキラと大きな星が夜空をゆっくりと流れていくのが見えた。  わあ、本当に流れ星だ! 「わぁ大きいね、ユナ。私、あんなに大きな流れ星、見るの初めて」 「ボクもだよ」  ほおを赤くしてぴょんぴょん飛びはねるユナ。  その顔を見ているうちに、何だか私もワクワクしてきちゃった。  その日、ニュースは大きな彗星が地球に近づくという話でもちきり。  もうすぐ新学期だし、クラスの話題に乗りおくれないようにと、私とユナも彗星を見るために家の外へと出てきたんだ。 「キレイねー」  真っ暗な空。長くしっぽを引く大きな流れ星。  私たちが夜空をうっとりと見ていると、ユナが急に変なことを言い出す。 「なぁサナ、あの星、こっちに近づいてきてないか?」 「えっ? だってテレビでは、地表に着く前に燃えつきるから地上には降って来ないって」  でも言われてみれば確かにこちらに向かってきているようにも見える。  じっと見つめていると、七色にかがやく大きな流れ星は、キラリと大きな光を放つと、夜空にすうっと消えてしまった。 「燃えつきたのかな。それとも」 「方角からして、星丘山に落ちたんじゃないか」  私とユナは顔を見合わせた。 「見に行ってみる?」 「ああ、そうだな」  二人でうなずきあう。  星丘山は、家のすぐ裏にある、丘みたいな低い山。  私たちは、けもの道みたいな暗い山道を、スマホのライトをたよりに登りだした。  五分ほど歩いたころだろうか、登山道から外れたヤブの中に、何やら光るものが見えた。 「何だろ」  草木をかき分け、光のもとをさがす。 「まさか、彗星じゃなくてUFO?」 「ええっ、まさかぁ」  ビクビクしながら近づくと、急に光がシュン、と消えた。 「この辺りかな」  地面を見わたすと、うっすらと光る小さな茶色い石が見えた。 「何なんだろう、これ」  スマホの光で照らしてみると、それは 石でできた動物の人形のように見えた。  ギョロッとした目、大きな耳、尖った牙。変なかたち。 「何これ。犬? キツネ?」 「ボクにも見せて」 「いいよ。はい」  だけど私がユナに人形を渡そうとしたその時――不意に手がツルリとすべった。 「……あ」  ガッシャーーン!!!!  大きな音をたて、土でできた人形みたいなものがくだけ散った。 「ちょっと、割れちゃったじゃん」  思わずさけんだ。だけどユナの返事がない。 「ユナ?」  ユナの様子が変だ。  顔の周りに黒いもやみたいなのがかかって、まるで仮面をかぶってるみたいになっている。 「な、何これ」  少し怖くなった私だけど、手をのばし、思い切って黒いもやにつかみかかる。 「何なのこれ。ユナからはなれて!」  必死で引っ張るけど、黒いもやはビクともしない。よく見ると、黒いもやには角――いや、二つの大きな耳がある。  これは犬? まさか、あの犬の置物から出てきたの!?  背筋がゾッとする。  どうしよう。きっとあの置物には、悪いものが封印されてたんだ!  もやから不気味な声がひびく。  “ん? 同じ顔が二つ? まさか双子かワン?”  ワン??  よく分からないけど、とにかく返事をする。 「そ、そう。私たちは双子。悪い!?」  声が笑う。  “双子は大いなる幸運、あるいはわざわいを引き起こすと言われてるワン。これは面白いかもしれないワン”  声と同時に、目の前が真っ暗になった。   「何?」  あっけにとられたけど、すぐに理解する。  さっきユナに取り付いていた黒いもやが今度は私に取りついたんだ!  だけど、気づいた時には時すでに遅し。  強烈な頭痛とめまい。私はその場に倒れてしまった。  遠くなる意識の中、最後に聞いたのはこんな声。  “私をあの人形から出してくれたお礼だワン。二人には、力をあたえることにするワン”  頭痛とともに、ピカッと雷みたいな真っ白な光が全身をかける。体が熱い!  犬の形をした光が高らかに宣言する。  “偉大なる双子の超能力者の誕生だワン――!!”  えええええ!?  何、それ!!  ――こうして私・サナと妹のユナは、双子の超能力者となってしまったのでした。  
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