プロローグ いつかの夢

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プロローグ いつかの夢

「なあ、×××!」  夕焼けのオレンジ色に包まれた、山の中にある神社の境内で、俺はあいつの名前を呼ぶ。  隣に立つあいつからは、お日様の下で乾かした洗濯物のような、あったかいにおいがした。 「どうしたの?」  不思議そうに首をかしげるそいつに、俺は言う。 「俺たち、これからもずっと、友達でいような!」  俺が右手の小指をさしだすと、そいつは、どこかぼんやりとした様子で、ぽつりとつぶやいた。 「……これからも、ずっと」  ずっと。  その一言をかみしめるように、ゆっくりとまばたきをする。  そんなあいつに、ニシシッと笑って、俺はなおも小指をつき出したんだ。 「ああ! それで、ずっとずっと、一緒に遊ぼう!」  俺の言葉に、あいつは、少しだけ迷うように目を伏せて。  けれど、それから、ゆっくりと顔を上げると、小さくうなずいてくれた。 「……うん」  そしてそいつは、その細い小指を、俺の小指にからめて、笑う。  夕焼けに照らされたその笑顔は、めちゃくちゃかわいくて、それでいて、とてもきれいで。  だけど、何でか、泣きだしそうにも見えたのを、今でもよく覚えている。 「ずっと、一緒だよ――ツバサ」  あいつがそう言った瞬間、遠くの山の向こうに、ゆっくりと太陽が沈んでいって――
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