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私の様子がおかしいことを察してくれたのか、大家さんは体の向きを私のいるほうに向き直して、さっきまでとは違う明るい声でこう言ってくれた。
「そうですよね。主役を置いて先に行くなんて、おかしいですよね」
大家さんの優しさに感謝はしても、やはり何も言えなかった私は、軽く頭を下げてお手洗いに行った。
今の私がどんな顔をしているのか、それだけは見ておきたかった。
「うわ……かなり目が赤くなってる」
お手洗いの鏡に映った自分の顔にうんざりしたけれど、化粧でごまかせるものでもない。せめて表情だけは明るくしようと、鏡の前で笑顔をつくった。
大家さんだけじゃなく、他のみなさんも私を待っているんだ。いつまでもこうしてはいられない。
私は自らの頬を軽くはたいて、強い気持ちをもって扉を開けた。視界の先には、大家さんが所在なげに立っているのが見える。
私が小走りしているのが見えたのだろう。大家さんは私の部屋から少しだけ移動して、私を迎え入れてくれた。
「すみません、お待たせしちゃって」
「いえいえ。それでは、準備はよろしいですか?」
「なんですか、それ。私にもしなきゃいけない準備があるんですか?」
「いや、なんでもないです。お席はさっき話したところですから」
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