蝶々結び

ひだまりの中で

「何を見ていらっしゃるの？」
縁側にお母様が座っていらしたので､私は庭からそう声をかけたのです。

　お母様は眩しそうに目を細め、庭の花壇に顔を向けておいででした。

　私がもう一度、声をお掛けしたものかと迷っておりますと、お母様は小首をかしげて小さく息をつかれました。

「なんだか少し、寂しいわ」

そう呟くと、お母様は不意にお着物の袂(たもと)からスルスルと､紐を引き出されました。

右の袂からは、赤い紐
左の袂からは、青い紐

　私は引き寄せられるように縁側へと近づきそっとお母様の隣に腰掛け、その白い手に魅入っておりました。