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「我らから逃げられるとでも思ったか!」
「覚悟しろ!」
息せき切らせて追いついた四人の追手とは対照的に追い詰められた男は息ひとつ乱れておらず、そして憎たらしいほどに落ち着いている。
光沢のある臙脂色のライダースジャケットに鮮やかな金髪のうしろ姿は夜の街でもひときわ目立つ。背中には身の丈ほどもある巨大な木刀を差しているが、今のところそれを抜く気配はない。
ようやく振り返って敵を睨め回した彼の端正な顔に焦りは見えず、また一言も発しなかった。
額にはなにやら文字が書かれた半紙が貼り付けてあり、それが顔の右半分を隠している。
半紙にはこう書かれていた。
『ぽんこつ』
そして四人の追手の顔にも半紙が貼り付けてありそれぞれ汚い字で
『むっつり』
『へたれ』
『はげちゃびん』
『味噌汁野郎』
と書かれていた。
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