ずぶ濡れスーツの王子様

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「懇意にしていただいている横浜の老舗の商会が、元々、取り引きをしていたんですが、いろいろと事情がありまして、アイランドからの依頼をこなせないと判断したんです。 とは言え、一度受けた仕事は、なんとかしないといけないでしょ。信用に関わりますから。」 「それは、そうだな。この仕事、信頼関係がものを言うからな。」 「はい。それで、大手の四葉に在籍してるってことで、取り引きのある俺に白羽の矢が当たりました。大手の四葉なら、なんとかできるんじゃないかって考えたんでしょうね。 力を貸して欲しいって言われて、断る理由も特になかったんで、その仕事を請け負いました。」 「ウォン氏とは?」 「彼を、直接知ってたとか、繋がりあったわけじゃないですよ。 アイランドの注文の品が、中国茶器だったので、最初、内と契約してる香港と上海のバイヤーに頼んだんですけど、それを上手く集められなくて。 納期もあるし、壁にぶつかってるときに、俺の友人…他社の人間ですけれど、彼が、ウォン氏と繋がりのあるってことが小耳に入ってきました。 それで、彼に頼んで、ウォン氏との間に入ってもらったんです。ウォン氏は、かなりの遣り手で、香港華僑の顔役のひとりなんだそうです。」 「成る程、持つべきものは、信頼と人脈だな。この仕事、それで動いてるところあるからな。 北詰君、期待してるぞ。」 部長は、がははと笑ってそう言った。
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