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あたたかい真綿に包まれたような心地良さ。
そんなふわふわとした微睡みから浮上したところで、首筋を這う熱と生暖かいなにかに、健やかな目覚めは羞恥と混乱にぐるぐると掻き回された。
向かい合ったまま、リアムの逞しい腕に抱きしめられて目覚めた朝。
「んっ……」
首筋を這っていた舌で、ちゅるっと甘く吸われ、思わず声が漏れると同時にひくっと腰が跳ねる。
甘さと落ち着きが折り重なった嗅ぎなれた心地よい香りは、首元に擦り寄る柔らかいミルキーブラウンの毛先からも漂う。
ふわりと触れる毛先は擽ったくて、心地がいい。
その感覚に、昨夜告げられた「魂のペア」として心を確かめあったことが夢じゃないと自覚させられた。
思い出すと身体の芯から、愛おしさと高揚感が込み上げて落ち着かなくさせる。
嬉しくて、恥ずかしくて、こそばゆくて、幸せ。
ふと、パジャマの裾から潜り込んでいた大きな手が、胸のあたりまで上昇するとさわさわと撫でる動きに変わる。
ぞわぞわと駆け上がってくる昨夜キスをした時に感じた快楽と同じ痺れ…
そんなところ触られても、なにもないはずなのに、初めて感じる肌のざわめきに動揺してしまう。
動揺を知ってか知らずか、彷徨っていた手のひらがするりと胸の小さな蕾に触れた。
「んぅ〜っ……り、あむさ……おきてっ」
寝起きの声は力なく、寝惚けているリアムにはなんの抵抗にもならずに、羽先で肌を擽られるような甘い愛撫は続く。
ゆるやかな愛撫が往復しているだけでも泣きそうな快楽が身体を支配するのに……。
そんな指先が突然、緊張で実を膨らませた胸の蕾を掠めた。
「ひぅっ?!……ぁ、ゃ、りあむさ……ほんと、おきてくだ……んぅっ〜!」
ぴんっと弾けた強い刺激に思わず、身体が跳ねて高い声をあげてしまう。
びくつく身体と出た声の高さに依春自身が驚いたが、「……はるくん……」とかすれた声が返り、顎をすくわれたことに更に混乱が増す。
最後まで言葉を紡ぐ前、声ごと飲み込まれるように唇を塞がれた。
ゆるく開いたあわいを割って、舌を絡み取られる。
「ゃぅ……んっ……」
まるで、目の前に据えられた獲物を捕食者が喰らうように…
舌の根元を擽り、硬口蓋と頬粘膜の甘さを確認するように蹂躙される。
少し前まで真綿に包まれたような心地良さに揺られるだけの熱は、簡単に欲情の熱へと追い上げられてしまう。
その欲の昂りのタイミングを見計らうように、弱い舌先を甘く食まれて、じゅっと吸い上げられた。
じわじわと身体の中心に燻る熱は、もう抗い難いものへと変わり、もっと欲しいがいっぱいになってしまう。
ちゅっと吸われる舌ときゅっと転がすように摘まれる蕾に、ひくひく揺れる腰。
「ひゃぅっ?!……やっ…んぅ〜〜っ!!」
揺れる腰は、ぴたりと抱きしめられたリアムの腹部に擦り付けるように快楽に溺れていく。
まって……こんなキス知らない……
昨日までは、こんなに荒々しくて食われてしまいそうなものじゃなかったのに。
今までの触れ合いが可愛い戯れだったことを思い知らされる。
――甘やかしてとろとろにするつもりだから……慣れてね――
昨夜のリアムの言葉が蕩け始めた頭に浮かぶ。
甘やかしの度合いが依春の予想を遥かに越えていて、くらくらしそうだ。
キスだけで感じてしまっているという羞恥と苦しいほどの甘さを与えられる多幸感……。
胸も呼吸も苦しくなってきた所で、pipipi……!と目覚まし代わりのスマホのアラームが鳴り響く。
「……っ?!っぁ……ハ、ルくん……ごめん。夢を見ていたみたいで……」
淡いブランデーの瞳と目が合うと、状況を察したらしく瞬いて、起き抜けの低音でかすれた声が心配そうに聞いてくる。
心にふわりと触れて、染み入ってくる低いけど澄んだ声に溶かされていく。
軽い酸欠でぼんやりする依春はすぐには返事ができなくて、「だいじょうぶ?」に頷いてみせるしかない。
その間に、アラームが停止されて、依春の息づかいとパジャマの中で蕾を弄んでいた手が去っていく布地が擦れる音だけになる。
夢の中で、依春をそういう風に抱いていたのかな、なんて思いをめぐらせて、ほっとするやら恥ずかしいやらで朝から頭がぐるぐるしてしまう。
どんな反応を返したらいいか分からないから、ゆるんだ腕から抜け出そうと上体を浮かす。
「いえっ……。ぁ、朝ごはん作らないとっ……」
やっと出てきた言葉に解放してくれるかと期待したのに、腰を片手で抑えられてしまう。
軽い力なのに、目覚めから半ば強引に昂らされた身体はその力にすら抗えない。
「まだ、早いよ……。俺のせいで早く起こしちゃったし。それから、ハルくん……これ、朝だからじゃないでしょ?」
「……ッ」
腰に添えられていた手が腰骨をなぞり、前へとまわって、スウェット越しに、ゆるく反応しかけている依春の中心を分からせるかのようにやんわりと包み込む。
「ごめんね。俺が寝惚けて触っちゃったから、いい子のハルくんはちゃんと反応してくれたんだね」
「〜っ、ごめんなさい……っ、と、トイレで落ち着いてきますから、だから……はなして……んぅ!」
リアムに責められてるわけじゃないのに、過去のDomに刷り込まれた偏った服従心から、謝罪が口をついてしまう。
1人で気持ちよくなるなんていけない、Domを最優先に……
逃げ腰になる身体を、引き止めるようにリアムはゆるく手を上下させて刺激してくる。
リアムにされることは、全て心地いいことだと、魂から惹かれあってしまうから、簡単に身体が熱を溜めて欲に向かって流されていく。
「……だめ。ハルくんだけじゃないから、安心して」
依春の不安をすくい上げ、わからせるようにぐっと腰を押し付けてくる。
押し当てられた熱は、布越しでもわかる硬さを保っていた。
「……でも……っ」
一瞬怯んだ依春の腰を引き寄せられて、快楽で潤んだ瞳を向けると、普段はあんなに爽やかでやわらかいのに、寝起きの気だるさと色気を醸し出したリアムの瞳とぶつかった。
「今だけじゃないよ。ハルくんに初めてアフターケアした日からずっと……、もちろん君が酔って介抱した日も、昨夜も」
その後に続いた、「押し隠していたけど、昨日、ハルくんと魂のペアだって確信をもって、君がパートナーになってくれて。もう歯止めが効かないんだよ」と、はにかむ笑顔に喉が詰まる。
なんて、想われていて、幸せなんだろう……。
「……ということで、俺が責任をもって鎮めてあげるね」
「……ぇ?」
ということで……?その言葉は、どこに係るの?
言葉の意味を理解するより前に、くるんと身体が反転させられた。
気づいた時には、横を向いて向き合っていたはずの身体は、仰向けにされ、リアムに見下ろされる体勢になる。
身体をよじって制止を願おうとしても、下着の中まで入ってきた手が反応したものをゆるく握り込む。
「昨日も言ったけど、ハルくんが俺じゃなきゃ満たされないのと同じで、俺も君じゃなきゃ満たされないんだよ。だから、甘えて欲しいな……」
でないとリアムのDomは満たされない。
言葉の裏に、他のDomにされてきたことと同じ反応を示してしまう依春を安心させようとするのが伺えた。
同時に、大多数のDomとは決定的に違うことも……。
依春にとっての唯一は、リアムにとってのそれと同じだと。
びくりと跳ねた依春の身体を宥めるように、耳朶や首筋を唇で愛撫しながら、蜜を滴らせている依春の先端を擦りたてる。
「んぅっ……ぁっ、ゃ、だから、僕がしま、す……っ」
「ん〜?それって、ハルくんが1人でしてるところをPresentしてくれるってことでいいかな」
いつの間にか脱がされたボトムと下着は、脇に避けられていて、甘く乱れた喉声を漏らす依春を尖端の蜜を指先で塗り伸ばしながら優しく追い詰めてくる。
前にも「1人でしてるところ見せて欲しい」と言われたことがあるけれど、あの時は首を振ったら引いてくれたのに。
今の問いかけは、引いてくれそうにない声音をしている。
「っ……ちが、リアムさ、んの……っ」
捉えた獲物をじっくり喰らうために観察している捕食者の瞳。
熱を帯びたブランデーの瞳に、思わず息を飲むと、納得したリアムは依春の予想を越えたことを宣った。
「……じゃぁ、一緒にしようか」
「ぇ、あ……?そんな……っ」
「俺のことを気にかけてくれて言ってるんだもんね。なら、一緒でいいと思うよ」
いつも依春ばかりだから、リアムの熱を解放してあげられたらと思ったのに……。
Presentで1人でするのだって羞恥プレイだけど、彼が喜ぶなら我慢させてきた分、してあげたい。
でも、リアムは、依春の逡巡の意味を知っていて、一緒にすることを提示してくる。
「ぁぁ、時間は気にしないで。1時間早くアラームをセットしておいたから、ハルくんを可愛がる時間はたっぷりあるよ……」
ぐっとリアムは依春の細い腰を引き寄せると、自らの果実を取り出して熱と熱を擦り合わせてくる。
触れ合った果実は、依春が思ったよりも熱くて、思わず腰がびくついてしまう。
「っ……ぁ、ゃ、あつい……」
「ハルくんの蜜と混ざりあってえっちだね……。一緒に手も貸してくれる?」
コマンドなんて使われてないのに、リアムの一言一言に導かれるようにおずおずと手を伸ばす。
「そう、いい子。そのまま、気持ちいいところを撫でてみてね」
2人分の果実は、片手では包み込めなくて、両手を添えて上下に動かしてみるとリアムからかすれた吐息が漏れる。
普段から甘やかな低い声音で依春の心をいっぱいにしてくれるけれど、今は甘やかなかすれた声に色気が混じり合う。
そんな余裕が薄れた声音を依春がさせているんだと思うと、体の芯がきゅんとする。
包み込んだ依春の手が動くたびに、手のひらを濡らす蜜の音と果実のサイズがぐっと増していく。
だんだんと依春の果実の柄をごりごりと嬲り、互いの熱を確かめ合うほど……。
まるで擬似的に挿入をしている動き。
「んぅ……、ん、ぁ……」
「ハルくん、口あけて、声をききたいな」
「ぇぁっ……ひぅっ、それ、だめ……っ」
ごりっと果実の括れと括れを擦り合わせるように腰を使う動きに、きゅっと声を耐えていた唇から甘声が漏れてしまう。
そうされると、1度漏れた声は収まりがきかなくなる。
とんとんと腰を押し込むように果実同士を刺激されるたびに、零れてしまう縋るように甘えた声。
「だめじゃないでしょ?こんなに溢れさせてるのに……依春はいい子だから言えるよね」
確かめさせるように、指先で果実の先端からしとどに溢れた蜜をくちゅくちゅとスリットに添わせてくちてくる。
そして、ここで一押しである依春の今一歩が踏み出せない時に使う名前呼び。
呼ばれた瞬間に、自身の制御を失った心と身体は、かくんと力がぬけてしまう。
「ぁっ……!そこばっかり……やめっ……ぁ、んぅっ、僕ばっかり……っ」
依春の願いを引き出すように、濡れた果実の柄同士が擦れあって、血管の1本ずつがその熱を察知して堪らない甘美な痺れを伴って思考を蕩けさせていく。
快楽で緩む手をリアムの手が上から添えられて、上下に扱かれるから快楽の逃げ場はやすやすと塞がれる。
乱れた2人分の吐息と淫らに濡れた水音に支配されていく。
「言って……。依春のお願いは、俺の望みでもあるし。その望みを俺は否定しないから……」
今まで依春が許されなかったSubの選択権をリアムは、求めやすいように差し出してくれる。
痛いだけのプレイも、終わりのない恐怖でしかなかったプレイもぜんぶ忘れさせるように。
依春が求めるものに手を伸ばせば、きちんと与えてくれる安心感に変えていく。
「んぁっ……きもちぃ……からっ……りあむさ、んと……いっしょに、いきた……っ」
「っ……うん、いい子、いっしょにイこうね」
言った瞬間、手の中の果実が質量を増す。
さっきまでだって、それなりだったのに、完全ではなかったことを知らされる。
固まった思考は、リアムがふたつの果実をひとまとめにして握り込み、感じやすい裏筋を刺激したことで溶けていく。
「ひぅっ……ぁ、まって、んゃっ……きもちいっから……いっしょ……にっ」
「まてないよ。可愛い依春をみせて。俺も一緒にイけそうだから、大丈夫」
仕上げとばかりに大きな手で放出を促すように根元からまとめて扱き上げられる。
「っ……りあむさ……っ、僕、もぅ……っ」
「イきそうだね。可愛いお口もぱくぱくしてる……」
甘やかな声で囁かれると、果実の先端のひくひくと切なそうにしている窪みに指をかけてくりくりと抉られる。
「ぁぁっ……ふぅ……っ、んっ〜〜!」
びくりと手の中の果実が脈打ったと思うと、全身を震わせて果てる依春の手にリアムのと合わせたあたたかい白濁が溢れて零れていく。
胸を喘がせる依春の腹部に散った、もうどちらのものか区別すら付けられない白濁を掬いあげられる。
「spaceに入ったハルくんもたまらなく可愛いけど……。これからは、spaceに入らなくても上手に甘えられるように教えてあげるね」
くすりと笑った気配は、まだ快楽にひくついて甘い涙が溢れた瞳ではぼんやりとしか伺えない。
けれど、愉悦に満ちたリアムの気配を感じて、甘やかされる至福を教えこまれた身体は、もっと欲しいと産声をあげはじめていた。
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