不思議な…

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不思議な…

「明かり?!」 どれくらい進んだかは分からない。壁に手をつきながら壁が続く方向へ足を進ませて大分経った時分、まだ少し距離はあるがぼんやりとした明かりのようなものが先に見えた。 空気の流れは確認できたものの、長い暗闇の道がどこまで続くのか分からなくて不安と焦燥で段々とおかしな感覚になりかけ始めていた矢先の明かりに胸が弾んだ。 いや、本当に嬉しくて男は思わず走り出していた。 出口だ!と思わずにはいられなかった。所持品は何も無くて、このまま出られなかったらとか最悪なことを考え始めていたから余計に嬉しくてたまらなかった。 そうして近づいてきた明かりは段々と強さを増し、眩しいほどに強くなったところで少しだけ道を曲がったその瞬間に、眩しさを強く感じて男は腕で目の前を覆った。 その明かりの強さに目が眩みかけたのだ。 徐々に近づいていったとはいえ、長い時間暗転していた視界には強すぎる光。 やっと外に出られた…と安堵しながら男は視界を慣らしながらゆっくりと腕を退けた。 「……………え?」 明るさに慣れた視界に映った光景には思わず声が漏れた。 目の前は明るかった。だけど望んでいた外ではなかった。 本来なら落胆する様な結果となるのだろうけども、その眼前にはそれを払拭するほどの予測も想像もできない光景が広がっていたのだ。 「…………」 男は暫く"それ"を見つめていた。 今いる場所を明るく照らす"それ"は一言で言えば不思議なものだった。 道を少し曲がった先には今までの通り道以上に高さや道幅が広がった所謂、空間的なスペースが広がっていた。 その広い空間いっぱいに"それ"は存在していた。 ナニで出来ているのかは分からない。大きな丸い球体が、これまたどうゆう原理か分からないがその空間に浮いていた。 "それ"は淡い緑色をしていて、不思議な光を放っていた。それがこの空間の明るさの要因であるのは分かったが、注目すべきはその『中身』。 球体の中には人がいた。 眠っているのか何なのか、目は閉じられていて、両膝を抱えて蹲る様な格好で球体の中にいるのは一糸纏わぬ姿の女の人…だった。
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