序章 ー弟ー

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「――海凪(みなぐ)。あなたに弟が出来るのよ」  嬉しそうに微笑んで、母親はそう言った。  その時羅井は12歳で、13歳の誕生日を間近に控えた頃、弟が生まれた。 「大地(だいち)って言うの。仲良くしてあげてね」  正直なところ歳の差があり過ぎて、最初は弟とは思えなかった。たまに会う親戚の子みたいな、初めて目の当たりにする動物と接するみたいな、そんな不思議な感覚だった。  ふにゃふにゃして、笑っていると思えばすぐに泣く。恐る恐る手を伸ばせば、大地は羅井の人差し指をぎゅっと力強く握り返す。  それが何だか嬉しくて、可愛いと思う内に弟の存在を理解し始めた。
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