5

23/37
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/171ページ
 蓮君の、泣いているところは見たくない。  悲しい顔も、苦しい顔も、見たくない。  出来るなら、笑顔でいてほしい。    この家で私と一緒にいるときは、蓮君はほとんど笑っている。  笑って……くれている。  蓮君は本当はどうしたいのかな。  周りの背景を見ないふりして、二人毎日を過ごしているけど。  蓮君が本当に幸せになれる未来って、罪を隠したままここで暮らすことではないよね?  蓮君のお母さんが生きていたら、彼になんて言うだろう。  時効が来るまで、人目を避け、隠れて暮らしなさいなんて言うかな?  もしも私のお母さんが生きていて、私が蓮君と同じような罪を犯したとしたら、お母さんは、私の罪を隠そうとするのかな?  お母さん、おばあちゃん、私、どうしたらいいですか?  蓮君に、会えなくなるのは嫌です。  その時のことを考えると、私が終わりそうで、世界から色が消えてしまうような絶望が見えて、胸が張り裂けそうです。  だけど、蓮君が目一杯笑える未来が、私との隠蔽生活の中であるとも到底思えない。  うつろな顔でハーブティーを飲む蓮君をじっと見つめていると、目が合って、また私に何か言おうとしていることがわかった。    頭がパンクしてしまいそうだから、できれば今は、もうこれ以上、何も言わないでほしい。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!