どうしてこうなった。

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「父上は……証拠も無いのにメルフィー嬢を貶めるとは、と仰られた……」 「という事は、陛下への監視役による報告は、メルフィー嬢が虐めなどしていない、という事でしょう」 「だが、監視役が買収されたなら」 「殿下。貴方、もう少し考えてから発言なさいませ。それは王家が派遣した護衛兼監視役が買収されやすい存在、と侮る発言ですよ」 「いや、決してそういうわけでは」 「そう仰られましたが。……まぁこれでお解りになられましたね? メルフィー嬢は、ウィリティナ嬢を虐めるなど出来ない。授業を抜け出せば、それこそ目立ちます。休み時間は護衛兼監視役の侍女が常に付き従っています。家でも同じ。当然王太子妃教育……王妃教育に王城へ来ていても居りますね。さて、尋ねます。彼女に虐めなど行う事が出来ますか」  サーベル殿下以下全員が、ガックリと項垂れる。だが、ウィリティナが嘘をつくとは思えない。では、一体誰が彼女を虐めていたのだろう。 「ちなみにウィリティナ嬢は虐められていたわけでは有りません。あまりにもマナーが悪いのでしょっちゅう注意されていただけです。時に数人の令嬢から同時に責められて1人で泣いている所を、貴方達が見つけて勝手にウィリティナ嬢が虐められている、と思い込んだ挙げ句にその主犯がメルフィー嬢だと、これまた勝手に思い込んで公衆の面前で貶めただけです」  学園長が、ウィリティナいじめの真相をあっさりと話した。……思い込み。そんな馬鹿な。だってウィリティナは皆から嫌われている、と。意地悪を言われる、と泣いて……。あ、確かに悪女メルフィーに意地悪を言われたとは言ってないな……。  こうして、俺達のやらかしは終結してしまった。その後だが。  サーベル殿下はウィリティナと婚約したい、という意思を変えないため、ウィリティナは先ずは婚約者候補になった。男爵令嬢が愛妾でもなく正妃になるというなら、教育が圧倒的に足りないから、らしい。本来、国王陛下の正妃は他国の王女殿下ないし公爵家の令嬢のみ。  側妃として侯爵・伯爵家の令嬢。子爵家以下の令嬢は愛妾にしかなれない。それは受ける教育が違うから、らしい。その慣習を無視して男爵令嬢を正妃にすると言うなら、公爵令嬢並みの教育を施した上で王太子妃教育ひいては王妃教育を受けさせるらしい。ちなみに何処かの公爵家へ養女に迎える必要も有るとか。  そういった細かい決まり事を知らなかった俺は、単純にウィリティナが王妃になれるものだとばかり考えていた。だがこんな大変だとは思わなかった。ウィリティナ、大丈夫かな。だが、もう俺の手は離れてしまった案件だ。俺に出来る事はない。ゾネスは、一応公爵家の令息として地位は残されるらしいが、一旦領地へ謹慎らしい。表向きは。本当は母親の所に一時預かりのようだ。  ゴレットとブルトンは、親から婚約者との仲を改善する事を最優先にされた、とか。2人共政略結婚で、相手方の機嫌を損ねると自分達の家に迷惑をかけるようで、必死に謝りに行っているらしい。きちんと、自分の何が悪かったかを説明して、毎日謝罪している、とか。  で、俺は。  何故か悪女メルフィーの婚約者候補として白羽の矢が立ってしまった。……何故だ。どうしてこうなった。
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