第九章 イスラムの敵イーリヤ

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 大統領府では黒ぶち眼鏡をかけた初老の人物が待っていて、にこやかに迎え入れてくれる。執務室まで肩を並べて一緒に歩く。 「いやイーリヤ君、今回も素晴らしい働きだったようだね」 「自分は大して働いていません。殆ど部下の功績ですよ」  真実そうだったが、部下が働くかどうかは上司次第とも言えるので「そうかそうか」と頷くばかり。部屋に入ると差し向かいで座る。 「アルメニアからはくれぐれも感謝を伝えるようにと言われている。ルワンダの威信を高めたことは紛れもない事実だと、私は確信しているよ」 「原発を守ることは出来ましたので、その部分だけは功績を受け取ります」  あくまで控えめに申告した。そんなことはいつものことで、アフリカでも中東でも、南米でもことを小さく報告している。過大に報告され、ミスは隠そうとする輩が多いのは世界共通のこと。そんな中、慎ましやかに遠慮している人物を見付けると、相応の評価をしてやりたくなるのが人情だ。 「我が国から中将へ与えられるものは少ない、国内での不逮捕特権に免税措置くらいしかない」 「お構いなく。やりたいことをしてきただけですので」  超法規的措置で不逮捕特権を得たとしても、弾丸が当たれば死んでしまうし、糾弾されれば名誉は失われてしまう。 「アメリカより通達があったよ。君の国際指名手配を取り下げるように、各所と調整をしたとね。これで自由に島龍之介として好きな場所に行けることになった。ルワンダはいつでも門戸を開いているのを覚えておいて欲しい」
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