第一章 アフリカの星

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◇  アフリカの内陸部、およそ文明とは切り離された場所。そこに突然街が出来て幾度日を越えたか。暦を問わず毎日が夏、平均気温は二十度と少しだが、平均という言葉を信用してはいけない。  難民が山のように集まり、居住区を形成しているのはあちこちで見られる光景だ。ここフォートスター市でも住み付いている奴らはその殆どが難民、或いは不法入国者に括られる。事前に区画割をされているおかげで、衛生状態は最悪を回避していた。これらはブッフバルト少佐とオッフェンバッハ総裁、つまりは夫妻の功績が大だろう。  フォートスター軍管区が一つの行政区、軍政を敷く場所として扱われていた。その実、住民らの推挙で市長が任命され実務の殆ど全てを委任されている。中央政府からの予算を与えられない代わりに、自由都市かのような権限があり、徴税も、市政も、防衛も、治安維持も、全てを自力で行う特別区域。  街の端にある要塞、元はと言えばアレこそがフォートスターであった。そこに街が付随して出来たというのに、規模が逆転して市民の間で「城」と呼ばれている。何があろうと殆ど手も口も出さずに、ただそこに在るだけ。街が出来てからたった一度だけ、市民の手に余る武装集団を殲滅する為に出動したことがあった。  黒い装備で統一された軍隊が現れると、極めて速やかに武装集団を鎮圧して城へと戻って行った。城の主は君臨すれども統治せずの姿勢を貫いている。だとしても、市長や議会は主の意思をくみ取って自発的にこの地をまとめていた。
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